猛毒ガエルはなぜ自分の毒で死なない?「毒素スポンジ説」が浮上

定説覆す研究結果、バトラコトキシンをもつヤドクガエルやズグロモリモズ

2021.08.13
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「これはナトリウムチャンネルを毒から守る何かがある、という手掛かりです」。マイナー氏は有力な説として、すでに自ら特定していたスポンジタンパク質を挙げる。

 マイナー氏らの研究グループは2019年、別の猛毒サキシトキシン(STX)からウシガエルを守る毒素スポンジを発見した。ズグロモリモズやヤドクガエルの毒素スポンジはまだ見つかっていないが、もちろん発見を目指しているとマイナー氏は述べている。

 カリフォルニア大学バークレー校の進化生物学者レベッカ・タービン氏はこの結果に感銘を受けている。タービン氏は、毒ガエルがエピバチジンという神経毒に耐性をもつ仕組みを研究している。(参考記事:「自らの猛毒耐えるカエルの謎を解明、応用に期待も」

「特に私の研究内容を考えると、(生きた毒ガエルの)ナトリウムチャンネルがBTXに反応しないことにとても驚きました。私たちの予測とは異なります」と、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるタービン氏は語る。

 ただし、タービン氏はこの結果を過度に一般化しないよう警告している。「これはカエルが持つ多くの毒素の一つにすぎません。とはいえ、彼らがテストしたケースについては、私は結果に納得しています」

【参考ギャラリー】色鮮やかで美しいヤドクガエル 写真12点(クリックでギャラリーページへ)
【参考ギャラリー】色鮮やかで美しいヤドクガエル 写真12点(クリックでギャラリーページへ)
マネシヤドクガエル(Ranitomeya imitator)。米メリーランド州ボルチモア国立水族館で撮影。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

毒素の研究、医療にも応用

 遠く離れた島の鳥や熱帯雨林のカエルはニッチな研究テーマに見えるかもしれない。だが、その生物学的な謎を解明することが世界中の人々に役立つ可能性もある。

「毒は歴史的に、特定のタンパク質に的を絞り、その機能を明らかにするうえで重要な役割を果たしてきました。また、医薬品設計の基礎にもなっています」とタービン氏は話す。(参考記事:「生物の毒が人間を救う」

 例えば、ウシガエルの毒に含まれる成分は抗がん作用を持つことが実験によって示されている。また、フグからイモリまで、さまざまな生物が持つテトロドトキシンは、新しい麻酔薬の原料として注目されている。

「私にとって最も興味深い疑問は、なぜ動物たちは自分の毒で死なないのかです」とマイナー氏は言う。「しかし(同時に)、この疑問は生物系について、根本的に重要な何かを私たちに教えてくれます」

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文=JASON BITTEL/訳=米井香織

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