トーロンマンは約2400年前、革ひもで首を吊るされた後、デンマークの泥炭地に投げ込まれた。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
[画像をタップでギャラリー表示]

 ボグボディー(Bog Body)は「湿地遺体」の意味で、北欧や英国の泥炭地(ピートボグ)で見つかる保存状態の良いミイラ化した遺体のことだ。細かい表情が残っていたり、殺害など過去にどのような経緯で死に至ったかがわかっていたりするボグボディーもある。 (参考記事:「遠方より来たる“泥炭地のミイラ”」

 ボグボディーの中でもよく知られているのが「トーロンマン」だ。1950年に、デンマークの中北部で泥炭を掘っていた人たちによって発見されたこの鉄器時代の男性は、毛糸の帽子をかぶっており、首の周りには紀元前350年頃に彼を絞め殺すのに使われた革ひもが巻かれている。トーロンマンは謎に包まれた殺人事件の犠牲者なのだ。

 トーロンマンが絞め殺されたことがわかっているように、ボグボディーの多くは殺害の方法(鈍器による外傷、のどを切り裂く、窒息させるなど)が判明している。しかし、どういう理由で死ぬことになったのかについてはわかっていない。彼らは無差別殺人の犠牲者なのか、それとも儀式のいけにえだったのか。いけにえであれば、どういう理由で選ばれたのか。いけにえとなる人には、死への恐怖をやわらげるための、最後の特別な食事なり毒物なりが与えられたのか――。すべて謎だ。

 7月21日付の学術誌『Antiquity』で、トーロンマンの最後の食事を詳細に分析した研究成果が発表された。これによると、最後の食事には特段、「驚くべき点が何もない」という意外な事実がわかった。(参考記事:「5300年前に死んだアイスマン 食料持参で山に」

 デンマークの泥炭地でトーロンマンが発見された70年前、研究者たちは、保存状態の良い胃と腸管を調べ、遺体は中年の男性であり、死の12〜24時間前に最後の食事をとっていたと推定していた。

 今回、トーロンマンを保管しているデンマーク、シルケボー博物館のニナ・ニールセン氏が率いる研究チームは、新技術を用いてトーロンマンの消化管の内容物を再調査した。ボグボディーの消化管の広範囲にわたる分析で、植物の大型化石、花粉、さらに食べ物や飲み物を示す微小な証拠が見つかったという。

参考ギャラリー:ところ変わればミイラも変わる、世界各地のミイラ11点(画像クリックでギャラリーページへ)
グラウベールマンは、デンマークの泥炭の湿地で時間をかけてミイラとなった。グラウベールマンは、2000年以上前にノドを切られ、その場に打ち捨てられたと考えられている。(PHOTOGRAPH BY ROBERT HARDING PICTURE LIBRARY, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

次ページ:焦げた粥(かゆ)の気になる中身

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

不老不死ビジネス 神への挑戦

シリコンバレーの静かなる熱狂

従来の老年医学、アンチエイジング医療とは一線を画する、革新的な長寿技術を追求する人々について書かれた本。最新の研究動向に加え、次世代テクノロジーに賭ける米国の投資家たちの熱意や、シリコンバレーの人脈図、ベンチャー企業誕生までの裏話がつぶさに描かれている。

定価:2,200円(税込)