ナキウサギがヤクのうんちを食べて越冬、異色の戦略が判明

冬の気温はマイナス30℃以下、青海チベット高原のクチグロナキウサギ

2021.07.22
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青海チベット高原に生息するクチグロナキウサギ。ナキウサギは見た目はハムスターのような小型の哺乳類で、世界に29種いる。(PHOTOGRAPH BY STAFFAN WIDSTRAND, NATURE PICTURE LIBRARY)
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 気温が低く食料がとぼしい土地に冬がやってくると、動物たちは移動したり、冬眠したりしてやり過ごすものだ。しかし、中国北西部の青海チベット高原にすむクチグロナキウサギ(Ochotona curzoniae)は、どちらの戦略もとらない。

 クチグロナキウサギが暮らす寒風ふきすさぶ草原は、冬になると日常的に気温がマイナス30℃を下回り、植物もしなびてしまう。寒冷地で暮らすほかの動物とは異なり、ナキウサギは余分な脂肪をため込まず、冬に体重は増えず、寒い時期を眠って過ごすこともない。

 彼らが厳しい冬をどのように生き延びるのかは長年の謎とされてきたが、13年間におよぶ研究の末、その秘密が明らかになり、7月19日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に論文が発表された。クチグロナキウサギは冬の間におよそ30%も代謝を低下させるうえ、通常の食事である植物に加えて、貴重な未消化の栄養分を含むヤクの糞を食べているのだという。

 この戦略の前半部分は理にかなっている。代謝が下がれば、1日に必要なカロリーが減るからだ。しかし、後半は意外だったと研究者らは言う。

「最初は、ナキウサギがヤクの糞を食べているという説を唱えても、だれも信じてくれませんでした」。英スコットランド、アバディーン大学の生理学者で研究リーダーのジョン・スピークマン氏はそう語る。

「しかし蓄積された証拠は、もはや議論の余地のないものです」

 ウサギやゾウ、チンパンジーなど、自分の糞を食べる動物は決して少なくない。ナキウサギもそうだ。しかし、別の種の糞を食べるこうした行動は「種間食糞」と呼ばれ、脊椎動物としては非常に珍しい。(参考記事:「ナキウサギ、“食糞”で温暖化に適応」

 スピークマン氏によると、ヤクの糞は豊富に存在し、苦労せずに手に入る食料と考えられるため、クチグロナキウサギはエネルギーを節約でき、またハヤブサやチベットスナギツネといった捕食者からも身を隠していられるのだという。

次ページ:アメリカナキウサギも?

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