ドイツの壊滅的な洪水、忍び寄る気候変動の影響

温暖化が1℃進むごとに豪雨はますます激しくなると専門家

2021.07.21
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ドイツ西部を覆った動きの遅い低気圧による豪雨は、壊滅的な被害をもたらし、多くの命を奪った。地域全体で泥流が家屋を押しつぶし、下水管がむき出しになった。(Photograph by David Young, picture alliance/Getty Images)

 ドイツをはじめ、ベルギーやオランダ、ルクセンブルクの一部で、数日にわたる豪雨が発生し、壊滅的な洪水をもたらした。死者は180人に上っている。

 今回の豪雨と気候変動との関係について、科学者らはまだ明らかでないとしているが、気候変動がどんな暴風雨をもたらすかはわかったと言う。すなわち、より多くの雨が、より長く降り続くということだ。

 洪水の大半が発生したドイツのライン川流域では、降雨量が記録を更新した。家屋は浸水し、ボートで道を渡らなければならなくなったほか、流域に建つ城の一部が流された。

「異常気象が増えることは気候モデルから予測されており、さほど驚くことではありません」と、ドイツのポツダム気候影響研究所の気候学者、ディーター・ゲルテン氏は述べている。それでも、今回の洪水の規模と激しさにはショックを受けたと言う。ゲルテン氏の生まれ故郷であるドイツ、オーバーカイルでも洪水があった。

「今回の出来事は、ドイツのような裕福な国であっても、厳しい気候の影響からは逃れられないことを示しています」と、米コロンビア大学の気候物理学者、カイ・コーンフーバー氏も言う。

ギャラリー:ドイツで大洪水により甚大な被害、豪雨と気候変動との関連は? 写真11点(写真クリックでギャラリーページへ)
2021年7月16日、ベルギー。冠水した住宅街でボートを漕ぐ男性。ドイツやベルギーでは、深刻な洪水のために道路が流れの速い水路と化し、車を押し流し、家屋を倒壊させた。(Photograph by Valentin Bianchi, AP Images)

気候変動で雨はどう変化するか

 世界中の天気予報を提供するAccuWeatherによると、西ヨーロッパでは7月中旬から、動きの遅い低気圧のために激しい雨が降り続いていた。ドイツの一部では、1日の降水量が例年の1カ月分を超えた。この低気圧は、7月12日にロンドン各地で洪水を引き起こした後、南ヨーロッパに向かって移動していた。

 気候変動は、今回の洪水に二つの点で影響を与えたと、科学者らは考えている。降雨量の増加と、暴風雨の動きの遅さだ。(参考記事:「より遅く危険になる台風、上陸後の速度は30%減」

「21世紀の気候のせいで、今回のような強い雨が起きる可能性が高まっているのか」との問いに、ゲルテン氏はそれはあり得ると答えている。

 気温が上昇すると、空気中に蓄えられる水蒸気の量が増える。科学者らの見積もりによると、気温が1℃上昇するごとに、大気中に蓄えられる水分量は約7%増加する。大気中の水分量が増えれば、ヨーロッパを覆う低気圧や大西洋のハリケーンなどによる降雨量も増える。

 洪水が発生するかどうかは、降雨量や都市開発の状況、地形(盆地か否か)などさまざまな要因に左右される。だが、今回の洪水がこれほど大規模になったのは、降雨量の多さが原因ではないかとゲルテン氏は言う。

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