コロナワクチンの追加接種はまだ不要、科学者らが主張する理由

変異株の拡大で製薬会社は緊急承認を要求、なぜ意見が食い違うのか

2021.07.21
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 ウェリー氏によれば、イスラエルにおける有効性の劇的な低下は、部分的には同国の強力な新型コロナ検査体制による可能性がある。「イスラエルでは常にあらゆる人を検査しています。無症状の感染者も拾いあげています」

 イスラエルのデータでも、ワクチンが重症化や入院を防ぐ効果は93%だとウェリー氏は指摘する。感染から完全に身を守るほど大量の抗体はなくなったとしても、長期的な免疫記憶が働いて感染を防いでいることが示唆される。

 他の国の公衆衛生データもそれを裏付けているようだ。7月初め、CDCのロシェル・ワレンスキー所長は、6月に米国で発生した新型コロナによる死亡者の99%以上がワクチン未接種だったと述べた。オハロラン氏は、それこそがワクチンを接種することの意義を示していると言う。

「ワクチンが感染を100%防ぐと言われたことは一度もありません。最も大切なのは、重症化や死亡を防ぐ効果です」

 ファイザー社、モデルナ社、J&J社のワクチンは、いずれもデルタ型を始めとする変異株に対して有効であることが示されている。もちろん、その状況が変わる可能性もあれば、ワクチンを逃れる新しい変異株が出現するおそれもある。しかし、オハロラン氏は、追加接種は変異株の脅威に対処する最良の方法ではないと指摘する。

「ワクチンを全く接種していない人たちがいる中で一部の人に追加接種するよりも、まずは全員に一度でも接種するのが最善策です」

これから調査すべきこと

 ワクチンの有効性に関するデータは心強いが、科学者や規制当局は、新型コロナワクチンに対する免疫系の反応を正確に解明するにはさらなる学術的な研究が必要だと指摘する。

「今後6カ月ほどの間に、免疫反応の他の構成要素がどのようなものであるかを、健康な人とリスクの高い人の両方について明らかにする研究が数多く行われることになると思います」とウェリー氏は語る。「ワクチン接種に対する免疫反応の複数の階層について、さらに多くの情報が必要です」

 また、公衆衛生上のデータ、特にワクチン接種者の入院率や致死率に注目することも重要だ。ウェリー氏によると、感染者がいつ最初にワクチンを接種したかを州がピンポイントで把握できるようになるのが理想だという。そうなれば、免疫が低下し始めたと思われる時期を特定しやすくなる。

 米保健福祉省の広報担当者は、規制当局もこれらの新しいデータをモニタリングしていると話す。「追加接種が必要だということが科学的に示された場合には許可する用意があります。CDCおよびFDAによるいかなる勧告も、徹底した調査の後に行われます」

 いずれにしても、追加接種が必要になったときのために準備しておいて損はないとウェリー氏は言う。「今のところ、ワクチンの接種を終えていれば、米国内で新型コロナによって重症になる可能性は極めて低いと確信して構いません」

文=AMY MCKEEVER/訳=桜木敬子

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