フレッド・スミス・コンクリート公園の木々が茂る緑地に装飾が施されたセメント像が並ぶ。米ウィスコンシン州の充実したビジョナリー・アートを代表する作品だ。 (PHOTOGRAPH BY FRANCK FOTOS, ALAMY STOCK PHOTO)
フレッド・スミス・コンクリート公園の木々が茂る緑地に装飾が施されたセメント像が並ぶ。米ウィスコンシン州の充実したビジョナリー・アートを代表する作品だ。 (PHOTOGRAPH BY FRANCK FOTOS, ALAMY STOCK PHOTO)

 壁や天井、家具まで、ラインストーン(模造宝石)やラメで覆われたコテージ。中にいると、まるで魔法の国に迷いこんだようだ。

 このコテージ「Beautiful Holy Jewel Home」(美しく聖なる宝石の家)は、「元祖ラインストーン・カウボーイ」を自称するロイ・ボウリン氏の空想芸術作品だ。ミシシッピー州マコームで制作されたこの作品は、米ウィスコンシン州シボイガンにオープンしたばかりの美術館「アート・プレザーブ」に展示されている。

 同館は、近くにあるビジョナリー・アート専門の美術館「ジョン・マイケル・コーラー・アーツセンター」の別館として、2021年6月26日にオープンした。ここには、セルフトート(美術教育を受けずに独学で制作する)作家たちの作品が数多く展示されている。(参考記事:「ギャラリー:一度は訪れてみたい、建物自体がアートな美術館・博物館 写真10点」

 アート・プレザーブ美術館は、このコテージをはじめ、質素な織物小屋や物置小屋から改築された聖堂などの建築作品を全米から移築し、「アート環境作品」として展示している。

「あらゆる物から、アート作品を生み出すことができます」と語るのは、コーラー・アーツセンターのディレクター、サム・ギャップマイヤー氏だ。ビジョナリー・アートの作家は、金属スクラップや合板、セメント、がらくたなどの廃棄物を再利用して、既成概念にとらわれない新しい作品を作り出す達人だ。

 ギャップマイヤー氏にとって、ビジョナリー・アートは「人間の基本的表現」だが、豊かな可能性を秘めているという。このような空想的な情景、等身大の彫像、風変わりな宗教的岩屋などがウィスコンシン州で制作されてきた経緯には、作品そのものと同じように興味深いものがある。

本流をはずれたアーティストたち

「フォーク・アート」「アール・ブリュット」「アウトサイダー・アート」など、美術の専門教育を受けたことのない作家たちの作品はさまざまな名で呼ばれているが、最近よく耳にする「ビジョナリー・アート」も同じような意味で使われている。

「フォーク・アートは、伝統と深く結びついています」。ワシントンD.C.にあるスミソニアン・アメリカ美術館のフォーク・アートとセルフトート・アートの学芸員であるレスリー・ウンバーガー氏は続ける。「ビジョナリー・アートの作家たちは、独自の理由や世界観に基づいて、地球の小さな場所を再建、再形成しようという内面の声に動かされているのです」

ギャラリー:コテージからさびた宇宙船まで 米ウィスコンシン州のフォーク・アート 写真5点(画像クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:コテージからさびた宇宙船まで 米ウィスコンシン州のフォーク・アート 写真5点(画像クリックでギャラリーページへ)
着飾ったコンクリート像は、木こりから彫刻家に転身したフレッド・スミス氏によるもの。アート・プレザーブで展示中のビジョナリー・アート作品の一部。 (PHOTOGRAPH BY KEVIN MIYAZAKI, THE NEW YORK TIMES/REDUX)

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