「パリ最古の木」の称号を持つニセアカシア(Robinia pseudoacacia)。ルネ・ビビアニ広場でコンクリートの松葉づえに支えられている。奥にノートルダム大聖堂が見える。(PHOTOGRAPH BY KEYSTONE/GETTY IMAGES)
「パリ最古の木」の称号を持つニセアカシア(Robinia pseudoacacia)。ルネ・ビビアニ広場でコンクリートの松葉づえに支えられている。奥にノートルダム大聖堂が見える。(PHOTOGRAPH BY KEYSTONE/GETTY IMAGES)
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 筆者(ジャーナリストのロバート・クンジグ)が滞在しているフランス、パリのアパートの窓からは、それほど高くはないが注目に値する木が見える。「パリ最古の木」だ。プレートには、1601年に植えられたとある。ニセアカシア(Robinia pseudoacacia)という木で、原産地は米国のアパラチア山脈だ。

 さまざまな理由から、1601年という数字は疑わしい。しかし、17世紀初頭、歴代フランス王の庭師だったジャン・ロバンによって植えられたことは確かなようだ。その後、幾多の戦争や革命を乗り越え、2021年の夏も緑の葉を茂らせている。傷だらけの幹をコンクリートで支えられた姿はまるで老兵だが、この木は実際、ある侵略の先頭に立っていた。17世紀以降、米国のニセアカシアはヨーロッパ、さらには、世界中に進出している。

 特に中欧では、林業関係者たちをとりこにした。薪を得るために木を伐採し、丸裸になった土地で、ニセアカシアは素早く成長し、土壌の浸食を防いでくれるためだ。中国北西部の黄土高原では、地球最大規模の土壌浸食に対処するため、数十年前から10万平方キロ超の土地にニセアカシアが植えられている。ニセアカシア自体にも、燃料や木材としての価値がある。

 ロバンが米国から輸入した木を庭に植えて4世紀。ここフランスでは現在、ニセアカシアは防虫処理なしでガーデン家具に使用できる唯一の「ヨーロッパの」木材として宣伝されている。熱帯から輸入されたチークに代わる持続可能な木材らしい。

参考ギャラリー:はるばる訪れる価値がある、世界の象徴的な木 19選(画像クリックでギャラリーへ)
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ワナカ湖の孤独な木:ニュージーランド、ワナカ
まるで湖の底から生えてきたようなヤナギの木。マウント・アスパイアリング国立公園の端に位置するワナカ湖を訪れた人は、必ずこの孤独な木に目を奪われる。(PHOTOGRAPH BY MARTIN VALIGURSKY, ALAMY)

 問題は、ニセアカシアが植えられた場所にとどまらないことだ。驚くほど繁殖力が強く、地下茎で広がっていく。その点では、もう一つのたくましい木、ニワウルシとよく似ている。英語で「天国の木」とも呼ばれるニワウルシは、18世紀に中国から米国へ渡った。舗装道路の割れ目からでも育つこの魅力的な木は米国の庭師たちに愛され、1945年の映画「ブルックリン横丁」にも登場した。

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