「パリ最古の木」が教えてくれること

ノートルダム大聖堂近くに立つ、米国から来た老木ニセアカシア

2021.08.12
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 しかし2021年3月にナショナル ジオグラフィックが紹介したように、ニワウルシは生物多様性を守るうえでは「地獄の木」とも言うべき存在となっている。科学者たちは駆除する方法を必死に探しており、新たに発見された菌類に期待を寄せている。(参考記事:「「天国の木」という名の侵略的外来種 菌は駆除のカギとなるか」

 とはいえ世の中は単純ではない。チェコの科学者チームは2019年、南欧におけるニセアカシアの拡大を評価した際に、次のように結論づけている。「今回の結果は、ニセアカシアの栽培を推進すべきか、広く許容すべきか、あるいは、危険な侵入種として根絶すべきかという重要な問題の答えを出すのが難しいことを裏付けている」。地域ごとにケースバイケースで対応すべきだとチームは述べている。

 パリ最古の木から約150メートル北に、筆者がここに滞在している本来の理由がある。ノートルダム大聖堂だ。建設された12〜13世紀はもちろん、大規模な修復が行われた19世紀へ通ずる入り口だ。2019年の火災により、尖塔が崩壊し、高いアーチ天井を突き破ったが、2つの時代から成る歴史の層を取り戻そうと、再建が進められている。

 そして、大聖堂からセーヌ川を挟んだ小さな公園にひっそり立つ年老いたニセアカシアは、自然界においても、私たちがつくり出した複雑な歴史をひもとくのは難しいことを思い出させてくれる。私たちにできるのは、なんとかうまく管理していこうと努力することだけだ。(参考記事:「ノートルダム大聖堂、失われたものと残ったもの」

参考ギャラリー:ありし日のノートルダム大聖堂 写真17点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:ありし日のノートルダム大聖堂 写真17点(画像クリックでギャラリーへ)
1920年代のノートルダム大聖堂。セーヌ川のほとりにあり、何世紀もの間、パリの象徴であり続けた。4月中旬、一部の建物が修復不可能なほどに火事で焼けてしまった。(Photograph by Crete, Nat Geo Image Collection)

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文=ROBERT KUNZIG/訳=米井香織

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