オオメジロザメは海岸の近くにいることが多く、淡水でも生きられる。(PHOTOGRAPH BY ANDY MANN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
オオメジロザメは海岸の近くにいることが多く、淡水でも生きられる。(PHOTOGRAPH BY ANDY MANN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 海洋生態学者のニール・ハマーシュラグ氏は、これまで数多くのサメを捕えては放してきた。なかでも最も印象に残っているのは、何といっても体重が450キロを超えるメスのオオメジロザメ(英語ではブルシャーク)だ。「ビッグブル」と名付けられたそのサメは、これまで試料を採取したなかでは最大級の個体だった。(参考記事:「ギャラリー:恐ろしくも美しきサメ、10選」

「文字通り、息をのみましたよ」。米マイアミ大学でサメ研究保護プログラムの責任者を務めるハマーシュラグ氏は、当時を振り返って言った。「体長が長いというよりも、とにかく体が太いんです。首の部分が、まるでレスラーのように盛り上がっていました」。ほとんどのオオメジロザメは体長2メートルほどだが、ビッグブルは3メートルあった。

 ハマーシュラグ氏のチームは2012年に、米国フロリダキーズ諸島の町マラソン沖でこのビッグブルを捕獲し、体に負担をかけないようにして血液と組織を採取した。血液分析の結果は、この個体が出産したばかりであることを示していた。研究チームはその後何年もビッグブルの行方を追っているが、それ以来、彼女の姿を見た者はいない。(参考記事:「90%のサメが消える事件が1900万年前に発生、原因不明」

 ところが近年、ビッグブルのその後が意外な形で明らかになった。フロリダ沿岸で見つかった3匹のオオメジロザメから試料を採取したところ、いずれもビッグブルの子どもであることがわかったのだ。

 過去に確認されたサメの子どもが見つかるケースは非常に珍しい。「干し草の山から針を探す、なんてものじゃありません。世界の海のなかで針を探すようなものです」と、ハマーシュラグ氏は言う。

 これは驚くべき話であると同時に、オオメジロザメを良く知る人々にとっては懸念をもたらすものでもある。

「この調査できょうだいのオオメジロザメが捕まるなんて、本来ならありえません。ところが、実際にはそうしたことが起きている。つまり、もうあまり多くのサメが残っていないということです」と、3匹のDNA解析を行った米フロリダ工科大学の分子生態学者トビー・デイリー・エンゲル氏は言う。

 繁殖できるおとなのサメは単純に減っている。世界的に見ると、国際自然保護連合(IUCN)はオオメジロザメを「近危急種(near threatened)」に指定していて、大西洋でも個体数が減少していることを示す証拠がある。(参考記事:「絶滅危惧の深海サメ、コロナが危機に拍車か」

ビッグブルの子どもたち

 ハマーシュラグ氏は研究の一環として、定期的にオオメジロザメを捕獲している。彼らを船尾に取り付けた特製の台に載せ、体の大きさを測り、血液を採取する。また、衛星タグを取り付けることもある。台に載せている間、サメが呼吸できるように、酸素を含んだ水が絶えず供給される。

 こうして得られたデータは重要だ。サメの行動を知り、移動を追跡し、保護計画を立てる助けとなる。

次ページ:巨大ザメはまだ存在する。だが……

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