イスラム教とコロナワクチン、一部は「禁忌」との声も、米国

指導者らがワクチン忌避対策に尽力、中絶胎児由来の細胞の使用には賛否

2021.07.15
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2021年5月1日、カリフォルニア州サンタアナのイスラムセンターで行われた新型コロナワクチン接種の会場で食事を提供するタコスの屋台。(PHOTOGRAPH BY FRANCINE ORR, LOS ANGELES/GETTY IMAGES)
2021年5月1日、カリフォルニア州サンタアナのイスラムセンターで行われた新型コロナワクチン接種の会場で食事を提供するタコスの屋台。(PHOTOGRAPH BY FRANCINE ORR, LOS ANGELES/GETTY IMAGES)
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 シカゴのビジネスシステムアナリスト、シャイフ・ラーマン氏は、新型コロナワクチンに懐疑的だった。信頼できる情報が十分に広まっているとは思えず、配布もやけに急いでいると感じたからだ。

「われわれの信仰では、何かを真実として広める前によく調べるべきだとされています」とラーマン氏は言う。

 そんな彼の気持ちが変化したのは、イリノイ州、ブリッジビューにあるモスク財団の地元のイマーム(指導者)であるシャイフ・ジャマル・ザイード氏が、ワクチン未接種者に対するモスクへの入場禁止の可能性に言及したときだった。

 礼拝に参加できなくなることを懸念したラーマン氏は、ワクチンの接種を考え始めた。入場禁止の話が出る前の時点で、ラーマン氏はすでに新型コロナウイルス検査で陽性となった経験があった。そこで氏は、モスク財団がファイザー社製ワクチンの接種活動を開始したとき、免疫を高めるために自分も接種を受けようと決意した。

「アメリカが活動を再開させる中、家族や愛する人たちがわたしを通してウイルスにさらされる危険を犯したくないのです」とラーマン氏は言う。

 米国各地でワクチン接種をためらう傾向が続いているものの、イスラム教徒コミュニティの中でも変化が起こりつつある。米国のイスラム教徒のワクチン接種率は、パンデミック初期には全国で最も低い水準だった。しかし、モスク、コミュニティ団体、移民コミュニティと連携した文化センターなどが行っている広範な支援プログラムが、デマを払拭し、ワクチン接種を促進する一助となっている。

 イマームなどの信頼が置ける人物から話を聞くことで、イスラム教徒の中にも接種を受けることを選択する人々が出てきている。

文化的にも適切な方法で

 中でも大きな影響力を発揮している団体のひとつが、サンディエゴ・ソマリファミリーサービス(SFS)だ。同団体では「イーサンヘルスイニシアティブ」というプログラムを実施し、地元の医療従事者チームが、バーチャル対話集会などのイベントを通じて直接的な働きかけを行っている。

「バーチャルの対話集会は、医師、看護師、モスクのイマームなど、コミュニティで尊敬を集める指導者たちを招くことによって、懐疑的な意見の払拭に貢献しています」と語るのは、SFSの地域医療従事者で、主にソマリア系住民を対象に活動しているバルキソ・フセイン氏だ。「文化的に適切なやり方で科学的な証拠を示すと、人々のワクチンに関する考え方が変化することがあります。話を聞いた当日にワクチン接種の予約を入れた人も大勢いたほどでした」

次ページ:医療機関での人種差別的な体験が影を落とす

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