ヴァージン創業者が自ら宇宙旅行を実現、すぐにベゾス氏も

長かった成功までの道のり、宇宙旅行ビジネスがいよいよ本格化か

2021.07.14
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【動画】スペースシップ2のフライトの一部始終
尾翼を持ち上げる「フェザリング」は43秒前後から。5月に米ニューメキシコ州で行われたフライトの映像。

数分間の弾道飛行宇宙旅行

 民間の宇宙進出は今に始まったことではない。2000年以降、数人の裕福な旅行者たちが、大金を投じて国際宇宙ステーション(ISS)へのフライトに同乗している。加えて、NASAはISSへの貨物や宇宙飛行士の打ち上げを、徐々に民間企業に引き継ぐようにしてきた。NASAが利用した商業的な貨物フライトは2012年に、クルーの打ち上げは2020年に開始されている。

 一方、ヴァージン・ギャラクティックやブルーオリジンなどの企業が何年も前から取り組んできたのは、そうしたものとは異なる類の宇宙飛行、すなわち弾道飛行宇宙旅行だ。近い将来、数十万ドルを一瞬で使い切るだけの余裕がある人なら、だれでも数分間の宇宙の境界までの旅に出られるようになるだろう。

 国際的に認められている宇宙の境界は、一般に高度100キロとされているが、米国は高度80キロを境界と定めている。先日のヴァージン・ギャラクティックのフライトは高度約86キロに到達した。7月20日に予定されているブルーオリジンのフライトは、高度105キロほどに達すると見られている。

 旅行者を乗せる新しい宇宙船を建造するのは極めて難しい。試験には何年もかかり、ときには事故で死者が出ることもある。中でもよく知られている例は、2014年のスペースシップ2試作機の墜落だ。現在、ヴァージン・ギャラクティックとブルーオリジンは試験フライトを終えて、搭乗券を購入した顧客を乗せた商業旅行へと移行する段階にある。

 ヴァージン・ギャラクティックにとっては特に、ここに至るまでは長い道のりだった。同社のスペースプレーンの起源は、1990年代なかばに始まった計画にある。

母船から発射する理由

 地上からクルーを乗せて打ち上げる従来型のロケットとは異なり、スペースシップ2は空中から発射される。「ホワイトナイト2」と呼ばれる母船が、スペースシップ2を高度約1万2000メートルまで運ぶ。スペースシップ2はそこで母船の底部から切り離されてロケットエンジンに点火し、宇宙の境界を目指して音速の約3.5倍の速さで急上昇する。

 ロケット飛行機を空中から発射するという手法は、人間を宇宙に送り込む方法としては複雑に思えるかもしれない。しかし「空中発射」には幾つかの利点があると、米カリフォルニア州にあるNASAアームストロング飛行研究センターの副支部長チャック・ロジャース氏は言う。この技術は、数十年間にわたる飛行研究によって開発が進められてきたもので、その中にはたとえば音速を突破した最初の航空機であるX-1や、1967年のフライトで最高時速7274キロを記録し、現在に至るまで史上最速の有人航空機であるX-15なども含まれている。

 空中からの発射は非常に効率がいい。密度の高い下層大気を宇宙船が自力で押し分けながら進む必要がなく、その分燃料も少なくて済むからだ。そして飛行機型の母船なら、従来の長い滑走路で離着陸ができ、発射台を追加で建造する必要もない。

 スペースシップ2の前に造られた実験的な機体「スペースシップ1」の設計は、1996年、「アンサリXプライズ」コンテストの発表と同時に開始された。アンサリXプライズの内容は、2004年末までに、パイロットと乗客2人の計3人分の重量を乗せた宇宙船を、2週間以内に2回、地表から100キロ超の位置まで初めて到達させた民間チームに1000万ドルが提供される、というものだった。

 同コンテストにおいて初期から注目を集めたのが、奇抜かつ極めて効率的な飛行機の設計で知られるエンジニア、バート・ルータン氏だった。ルータン氏は空中発射の設計を採用し、降下にも独特の方法を用いた。最高高度に到達する直前、スペースシップ1の2本の尾翼を65度上方に跳ね上げるのだ。この「フェザリング」システムが、降下時の抗力を大幅に増加させることによって機体の速度を落として、大気の中を安全に落下し、尾部を格納してから滑走路に着陸することを可能にする。

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