アラスカの凍土が解けている、デナリ公園道路で増える異変

2050年までにほとんどの永久凍土が消えるとの予測も

2021.07.15
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 デナリ国立公園では、地滑りによって公園道路がたびたび封鎖されている。2013年には、家ほどの大きさの永久凍土のかたまりが、イグルー・クリークの上の斜面を滑り落ち、4日間にわたって道路が寸断された。2014年には道路の一部が大きく崩落、ロッジから旅行者を救出するために自家用機や公園のヘリコプターが出動する事態となった。2016年には土砂崩れによって道路が4日間封鎖され、その後も一部通行止めが続いた。また、2019年には、合計300人の旅行者を乗せた17台のバスが公園のはずれで立ち往生し、負傷者は出なかったものの、数時間の遅れが出た。

公園道路が直面する問題

 公園の道路に対する今後の影響を見極めるため、研究者らは2003年から2019年にかけてこの地域の土壌を掘削調査した。公園のホームページによれば、この調査で「道路の直下に大量の融解しやすい(比較的地温が高い)永久凍土が見つかった」という。「この地域の永久凍土は、環境の変化に伴って融解が進んでおり、斜面の安定性の悪化をもたらしていると言えるでしょう」

 永久凍土の融解は、デナリ国立公園だけの問題ではない。米国立公園局はアラスカ州にある22万平方キロの土地を管轄しているが、このうち約16万平方キロは、永久凍土が50%以上を占める地域にある。

 1922年から1938年に整備されたデナリ公園道路では、温暖化の影響による変化が顕著に表れている。その一つは、公園道路の始点から73キロの地点で起きているプリティロックス地滑り。この地滑りは、1960年代に初めて観測され、当初は、数年に一度の小規模な保守工事が必要なだけで、たいした問題ではなかった。だが、アラスカの温暖化が進むにつれて、深刻な問題に発展した。

 2016年から2017年にかけて、路面は91メートルにわたって激しく沈下し始めた。最大で1カ月に15センチ沈下し、2018年と2019年には1日に5センチ、2020年8月には、9センチ沈んだ日もあった。今年の春、公園側は、約5100立方メートルの砂利(トラック550台分)を使って道路を補修した。

 公園道路沿いには、140カ所以上の「確認ずみの不安定な斜面」がある。「プリティロックスのように明白で重大な問題がある地点に注意を払うと同時に、他の問題も見逃さないように最善を尽くしています」と、デナリ国立公園・自然保護区の地質学者、デニー・キャップス氏は語る。(参考記事:「2016年5月号 苦悩するデナリ」

 デナリ国立公園は、米地質調査所と協力して高解像度の地質図を作成することで、デナリ公園道路沿いで自然災害に弱い地域についてさらに理解しようと努めている。公園で重大な変化が生じると、自動モニターシステムからキャップス氏に通報が送信され、夜中でもデータの査定を実施するという。

 デナリ国立公園では公園道路の問題に対処するため、橋の建設や迂回路の整備など、複数の選択肢を検討している。しかし、容易に解決できる方法は見つかっていない。

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 公園側が目下の課題に取り組む一方で、研究者たちも、将来を見据えた重要なデータの収集を進めている。国立公園局の物理学者スーサネス氏は、天然資源評価・監視ネットワークと協力し、データステーションを年間365日稼働させることに力を入れている。

「国立公園から非常に重要な基本データを入手することが、この長期監視プログラムにおける私の役割です。この百年にはなかったデータなのです」と、スーサネス氏は言う。「今では、かなり確かなデータが得られるようになってきました。今後、国立公園が直面する変化を理解する上で役立つことでしょう」(参考記事:「ついに村ごと移転開始、永久凍土融解で、アラスカ」

文=KRISTEN POPE/訳=稲永浩子

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