米国アラスカ州にあるデナリ国立公園・自然保護区は、アラスカを代表する面積2万4000平方キロの自然豊かな地域で、毎年60万人の旅行者が訪れる。
旅行者の多くが公園バスに乗り、現地で「ビッグ5」と呼ばれるハイイログマやオオカミ、カリブーといった動物たちに出合ったり、運が良ければ、北米最高峰のデナリ山(旧称:マッキンリー山)を眺める。(参考記事:「北米最高峰マッキンリー、デナリに名称変更」)
そんなバスの通り道となっているのが、デナリ公園道路という大部分が未舗装の道路だ。
ところが、この全長148キロの道路では近年、沈下や地滑りが発生し、公園側は大がかりな補修工事や一時的な道路封鎖を余儀なくされている。研究者たちは、気候変動がその原因ではないかと考えている。
デナリ国立公園の多くが永久凍土に覆われているが、地球温暖化が進むにつれ融解が進んでいる。永久凍土とは、2年以上にわたって0℃以下が続く地盤のことで、季節によって凍結と融解を繰り返す「活動層」の下に、永久凍土層がある。(参考記事:「永久凍土って何ですか?」)
この永久凍土層のうち、地表に近い部分の凍土(near-surface permafrost)は、1950年代にはデナリの75%を覆っていたが、2000年代には約50%になり、2050年代にはわずか6%まで縮小すると予測されている。


2021年1月に学術誌「Arctic, Antarctic, and Alpine Research」誌に発表された研究によると、アラスカの8つの国立公園における2014年~2019年の平均気温は、それ以前の30年間の平均に比べて少なくとも1℃上昇したという。デナリや北極圏にある公園では2℃近く上昇、約3℃上昇していた公園もあった。(参考記事:「永久凍土の「急速融解」、温暖化への影響は従来説の倍も、研究」)
「2014年から2019年に観測された温暖な気候が続けば、こうした国立公園やアラスカの類似の環境の地域では、永久凍土の劣化が拡大するだろう」と、論文を執筆した米国立公園局の環境学者デビッド・スワンソン氏、物理学者パム・スーサネス氏とケン・ヒル氏のグループは述べている。
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