イソギンチャクがアリを食べると判明、予想外の結果

胃の中身をDNA解析、海の生き物がなぜアリを?

2021.07.10
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ホワイトプラムドアネモネ(学名 Metridium farcimen)は、大型のイソギンチャクだ。(PHOTOGRAPH BY AGEFOTOSTOCK / ALAMY STOCK PHOTO)
ホワイトプラムドアネモネ(学名 Metridium farcimen)は、大型のイソギンチャクだ。(PHOTOGRAPH BY AGEFOTOSTOCK / ALAMY STOCK PHOTO)
[画像のクリックで拡大表示]

なぜアリが海に?

 ホワイトプラムドアネモネは、米国のアラスカ州からカリフォルニア州にかけて生息し、海中に浮遊する小さな生物を食べる。主な食べ物は、微生物から大きくてもアリ程度。大きな触手を持ったイソギンチャクの場合、その触手を使って獲物を口のなかに直接入れることができるが、ホワイトプラムドアネモネは、並んだ溝を交互に動かして、捕らえた獲物を胃に送り込む。

 今回の研究でDNAが検出された生物は、ほとんどが卵や幼生の時期に海中を漂っているので、イソギンチャクの獲物になりやすいことは理解できる。だが、陸にいるはずのアリが、なぜ海中のイソギンチャクに食べられたのかは謎だ。研究チームは、一つの仮説を立てている。

 このケアリ属の一種は繁殖期になると一斉に空へ飛び立ち、交尾相手を探す。空中で交尾に成功したメスは地上へ戻り、自分のコロニーを作る。一方、交尾を終えたオスは、死ぬ以外にもうやることは残っていない。(参考記事:「アリの飼育に夢中になる人が世界で急増、科学にも貢献」

 ウェルズ氏がイソギンチャクの調査をしていた時、特に多くの空飛ぶアリの群れを見た覚えはないが、フライデーハーバーには、いつもたくさん昆虫が飛んでいるという。ホワイトプラムドアネモネのサンプルを採取したのは8月だが、その時期にケアリが結婚飛行を行うという記録も存在する。(参考記事:「脳が小さくなったり大きくなったりするアリ、初の発見」

 結婚飛行の後に死んだケアリが海へ落ち、流れ流れてホワイトプラムドアネモネの腹に収まったという可能性はある。DNA分析で検出されたほかの昆虫も空飛ぶ虫だったのは、偶然ではないはずだ。

 アリの専門家で、米コーネル大学昆虫コレクションの責任者兼学芸員のコリー・モロー氏は、「結婚飛行するアリを狙う動物はたくさんいます。そのアリの一部が近くの海まで風で飛ばされて、海洋生物の獲物になるのは、考えられないことではありません」と話す。(参考記事:「【動画】爆速でサハラ砂漠を走るアリ、謎を解明」

 海の専門家も同意する。オーストラリアのトロピカル・クイーンズランド博物館の名誉研究員で、イソギンチャクが専門のミケラ・ミッチェル氏によると、海洋捕食生物が陸生の昆虫を食べることは、珍しいかもしれないが、あり得なくはないという。

次ページ:DNAバーコーディングの弱点

会員向け記事を春の登録キャンペーンで開放中です。
会員登録(無料で、最新記事などメールでお届けします。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

Jewels in the night sea 神秘のプランクトン

夜の海にあらわれた、美しい浮遊生物。眼には見えないきわめて小さな姿をカメラで覗いてみれば、姿も、色も、生態も、うっとりするほどの世界。28年間、海の神秘を撮る男の渾身の写真集です。

定価:2,970円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加