「それでも、花火が放出する有害物質の濃度は、健康被害を引き起こすレベルまで高まることがあり、特に子供や高齢者、呼吸器系疾患を持つ人たちは影響を受けやすいでしょう」(パント氏)(参考記事:「大気汚染で躁うつ病やうつ病に? 脳への影響は不明」

 有害物質に最もさらされているのが誰なのかについては、これまでよくわかっていなかった。独立記念日の花火がもたらす大気汚染の研究は、大半が米環境保護庁の数少ない大気質観測所のデータをもとにしたもので、大きな地域的傾向しかとらえられなかったからだ。

家庭用大気センサーのデータを収集

 今回の新たな研究で、カリフォルニア大学アーバイン校の科学者たちは、近年普及するようになった家庭用大気質モニターを使って、カリフォルニア州の各地域における7月4日の花火による大気汚染の状況を調査した。研究者たちが分析したのは、州内の個人宅に設置された「パープルエア」という大気質センサー751個のデータで、2019年と2020年の6月~7月を対象期間に協力してもらった。

 19年と20年のいずれも、研究チームは郡および国勢統計区レベルで、PM2.5(大きさが2.5マイクロミリメートル未満で人が吸い込めるほど細かい粒子)のパターンを調べた。特定の集団がこの汚染により多くさらされているかどうかを判断するために、彼らは2019年の結果を、州が公表している人種的統計、社会経済的地位、健康指標などに関するデータと比較した。

 その結果わかったのは、7月4日の花火による汚染は、一過性ながら非常に深刻な影響を及ぼしうるということだった。オレンジ郡では、2019年7月4日にPM2.5の1時間あたりのレベルが普段の3倍に、2020年7月4日のロサンゼルス郡の汚染レベルは平均の10倍にまで跳ね上がった。これはロサンゼルス大都市圏では昨年、独立記念日の花火が、中規模の山火事と同程度の煙を発生させたのと同じことだ。

 特に体が弱い人たちには、こうした大気汚染の影響が大きくなる。平均して、7月4日前後のPM2.5の増加は、南カリフォルニアの都市部の国勢統計区のほうが、農村部や北部のそれよりも大きかった。南カリフォルニアは、ぜんそくの罹患率が高く、高齢者や小さな子供が多く、黒人やヒスパニック系の住民が多い。南カリフォルニアの都市部はまた、北カリフォルニアと比べて、花火大会に対する自治体の規制が少なく、家庭での花火使用に対する監視も緩い。

「ロサンゼルスでは、住民による大規模な花火の購入や打ち上げに関する政策がそれほど厳しくないのです」。今回の研究の上席著者で、カリフォルニア大学アーバイン校公衆衛生学教授ジュン・ウー氏はそう述べている。

次ページ:花火が原因となる森林火災も

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