花火の季節 米国の研究で指摘された想像以上の大気汚染

独立記念日、米国内で打ち上がる大量の花火による大気汚染の影響は思いのほか大きい

2021.07.08
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米カリフォルニア州ノースハリウッド上空に打ち上がる花火。花火が発生させる煙と粒子は有害物質だ。とくに黒人やヒスパニックのコミュニティに暮らす体の弱い人々は影響を受けている。(PHOTOGRAPH BY KENT NISHIMURA, LOS ANGELES TIMES/GETTY IMAGES)
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 花火が大気汚染の原因となることは想像に難くない。米国と同様、祝日に花火を打ち上げる習慣がある中国やインドでも問題は同じだ。

 注意したいのは、花火から空に放出される有害な粒子による影響は、誰にも平等に及んでいないという点だ。例えば、米カリフォルニア州で7月4日の米独立記念日に花火による大気汚染の被害に遭うのは、弱い立場の人々のほうだ。(参考記事:「花火はこうして進化した 中、伊、米の歴史」

 2021年5月、学術誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」に、花火による大気汚染に関する論文が掲載された。この研究によれば、独立記念日にカリフォルニア州で打ち上げられる花火の煙はピーク時には森林火災に匹敵するという。

 さらに同論文の著者は、花火の煙は、すでに大気汚染の被害を過度に受けている地域に、さらなる健康リスクをもたらす可能性があると指摘している。具体的には、都市部でぜんそくの罹患率が高く、高齢者が多く、10歳以下の子供の割合が高い地域だ。また、こうした地域は、黒人やヒスパニック系住民が多い傾向にある。

 この研究で高リスクと指摘された地域について、「恒常的に有害な環境毒素にさらされています」と話すのは、米ジョンズ・ホプキンス大学の環境疫学者アイシャ・ディッカーソン氏だ。「花火は、すでに蔓延している持続的な問題を悪化させるのです」

火あるところに煙あり

 花火は、大きな音を出して美しい光を放つだけではない。花火を上げれば、必然的に煙が出る。あまり知られていないのは、その煙には危険な物質が多く含まれているということだ。具体的には、ぜんそくを引き起こしたり呼吸器系疾患の主要な誘因となったりする粒子状物質、さらにストロンチウム、バリウム、鉛などの有害金属が混ざりあったものが含まれている。

 1発の花火から放出される汚染物質はすぐに散ってしまう量に過ぎないが、7月4日の独立記念日に打ち上げられる大量の花火は、地域の大気汚染レベルを急上昇させ、しかも数日間はその状態が続く。それだけ、体の弱い人々には深刻な健康被害をもたらしうるのだ。(参考記事:「大気汚染で認知能力が低下、年齢が高いほど顕著」

「花火による大気汚染と健康被害の関係を取り上げた研究はごくわずかしかありません」と語るのは、NPO「ヘルスエフェクツインスティテュート」の大気汚染研究者で、祝祭行事にともなう大気汚染を研究しているパラビ・パント氏だ。

参考ギャラリー:寿命を縮める大気汚染 写真と図解16点(2021年4月号)(画像クリックでギャラリーページへ)
モンゴルの首都ウランバートルのダリ・エヒ地区は、教育と仕事を求めて地方から移住してきた遊牧民がひしめき合う。簡素な住宅やゲルという円形テントは電気がないか十分でなく、石炭がなければ厳しい冬を乗り切れない。首都の子どもは地方より肺機能が4割低いという調査結果もあり、長年続く健康問題への対策が急がれる(PHOTOGRAPH BY MATTHIEU PALEY)

次ページ:有害物質に最もさらされているのは誰か?

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