高温で亡くなる人の3分の1は気候変動が原因、研究

世界732カ所のデータを「気候変動のない仮想世界」と比べてみた

2021.07.07
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歴史的な熱波に見舞われた6月、市の救援センターで涼む米オレゴン州ポートランドの住民。気候変動がこの暑さを悪化させたことはほぼ間違いない。(PHOTOGRAPH BY NATHAN HOWARD, GETTY IMAGES)
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 記録的な熱波が、北米を襲っている。米国とカナダではすでに数百人が亡くなっており、データが集まるにつれその数は増えると見られる。(参考記事:「米西部で6月に最高気温を続々更新、なぜ? 長引く異例の猛暑」

 気候変動によって、熱波がより長く、より暑く、より頻繁に、そしてより危険になることは、これまで数多くの研究で報告されてきた。最新の研究では、そのことが死者数にどう影響を及ぼすかを評価した。5月31日付けで学術誌「Nature Climate Change」に発表された研究によると、6つの大陸の732カ所における「熱関連死(高い気温に関連した死)」のうち平均37%が、気候変動に直接起因する可能性があるという。(参考記事:「死の熱波、2100年には人類の4分の3が脅威に直面」

 今回の研究によって、人為的な気候変動への対処がいかに急を要するものであるかが浮き彫りになったと、論文の筆頭著者であるスイス、ベルン大学の気候変動疫学者アナ・ビセド・カブレラ氏は言う。研究には約70人の研究者が関わった。

「気候変動はいつかやってくるものではありません。それは現在起こっているものであり、すでに極めて劇的なかたちでわたしたちの健康に影響を及ぼしています」と氏は述べている。現在北米を襲っているような破壊的な熱波は、これからやってくる世界を暗示している。「37%という数字は、この先急激に上昇するとわたしたちは見ています」

熱波の死者

 1995年の米シカゴ、2003年のヨーロッパ、2019年のフランスなど、歴史的な熱波が発生すると、何千人もの命が奪われる。さらに、それよりずっと多くの人が深刻な健康被害を受けると、米ハワイ大学の気候科学者カミロ・モラ氏は言う。

「腎不全から脳の損傷、心臓の損傷まで、さまざまな影響を長期的に及ぼす可能性があります」

 これまで、都市における特定の熱波と死者数との関連を指摘する研究はあった。たとえば、2003年に起こったヨーロッパの猛暑では、人為的な気候変動によってフランス、パリの死亡リスクが70%上昇したという。今回の新たな研究は、こうしたタイプの分析を全世界に拡大し、人が暮らしているすべての大陸の700カ所以上の地域を対象とした。

 研究者らはまず、夏季に発生したすべての死亡例と場所、気温を調べ、猛暑が原因と見られる死亡例を選り分けた。気温がこれ以上上がると人が死ぬ可能性が大きく上昇するという閾値(いきち)は存在するが、そうした値は場所によって異なる。

 研究チームは、極端な高温(その町にとって快適な平均気温よりどれだけ暑かったか)と、そこまで暑くなった場合に死亡すると思われる人の数とを結びつける計算式を開発した。この手法により、調査を行った各地域において、猛暑が原因で実際に何人が死亡したかを割り出した。

 次にチームは、気候モデルを用いて、人為的な気候変動が起こっていない架空の世界をシミュレートした。そして計算式を使い、その理論上の世界において猛暑によって死亡していただろう人数をはじき出した。

 違いは明らかだった。地球は1800年代末から気温がほぼ1℃上昇しており、温室効果ガスの排出を減らすための本格的な取り組みが行われなければ、今世紀末までに少なくともこれと同程度の温暖化が進むと予想されている。

 もしこの1℃の気温上昇がなければ、熱関連死の数は、世界の夏季死亡者数全体の1%以下にとどまっていただろう。しかし現実には、熱関連死は平均で夏季死亡者数全体の1.5%を占めている。およそ60%の増加だ。

 この試算を全世界に拡大した場合、年間10万件以上の死亡例が、人為的な気候変動に起因することになるが、ビセド・カブレラ氏は、正確な世界規模の推定値を出すには、さらに多くのデータと分析が必要になると指摘している。(参考記事:「猛暑の世界を生き抜く」

次ページ:「重大な環境の不正義があります」

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