コロナ「デルタプラス」株の危険度は? 今わかっていること

デルタ株がさらに変異、日本国内でも確認と官房長官が発表

2021.07.06
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
新型コロナウイルス感染症の犠牲者を埋葬した後、防護服を着たまま休憩する作業員。2021年6月15日、インドネシア西ジャワ州バンドン市で。(PHOTOGRAPH BY ANTARA FOTO, RAISAN AL FARISI, VIA REUTERS)
[画像のクリックで拡大表示]

 新型コロナウイルスの新たな変異株が出現し、これが悪名高いデルタ株よりも危険なのかどうか、科学者らが解明に努めている。デルタ株はインドで数十万人の死者を出し、世界中で急速に感染拡大の主流になりつつある。

 この新たな変異株は、俗に「デルタプラス」と呼ばれる(ただし正式な呼称ではない)。新型コロナの感染拡大の「第2波」による大打撃を受けたインド西部のマハラシュトラ州は、デルタプラス株に対する懸念の高まりから、再度ロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。

 デルタプラス株と、インドと英国で主流を占めているデルタ株の違いはごくわずかだ。デルタ株は従来株より感染しやすく、入院が必要になるリスクを増加させると考えられている。既存のワクチンはデルタ株に対しても有効だが、1回接種では効果はかなり限られる。(参考記事:「コロナのデルタ株は「非常に危険」 警戒強める一方の専門家ら」

 世界保健機関(WHO)は、念のため、ワクチン接種を終えた人も引き続きマスクを着用するよう推奨している。「ワクチン接種が完了しても、感染の鎖を絶つために用心を続けましょう。実際、ワクチンを打っても完全に保護されるとは限りません。効かないこともあります」と、WHOのブルース・エイルワード上級顧問は6月25日の記者会見で呼びかけた。

 デルタプラス株は、3月中旬以降に世界のデータベースに登録され始めた。英国では4月26日に最初の5件の感染が確認され、6月4日に海外旅行が禁止された。しかし、6月9日までに確認されたデルタプラス株の感染者の中には、旅行歴や旅行者との接触歴がない人もいることから、英国内ですでに市中感染を通じて広がっていると示唆される(編注:日本では6月21日の時点で37例が確認されていると加藤勝信官房長官が25日の記者会見で発表)。

 デルタプラス株はまだ一般的ではないものの、インド保健・家族福祉省は6月22日、従来株より広まりやすく(伝播性が高く)、肺の細胞の受容体に結合しやすく、抗体反応を弱める特徴があるとして「懸念される変異株(VOC)」に指定した。

 しかし、デルタプラス株がVOCに指定すべき基準を満たすか否かは議論の余地がある。「インドがこれをVOCとしたのは、確かなデータに基づくというより、慎重を期してのことでしょう」と、英ケンブリッジ大学の免疫学者で感染症の専門家であるラビンドラ・グプタ氏は述べている。

デルタプラス株は懸念される変異株(VOC)なのか?

 ある変異株が頻繁に確認されはじめ、気掛かりな特徴が見つかった場合、公衆衛生当局は「調査中の変異株(VUI)」に指定して正式な調査を開始する。その結果、従来株より伝播性が高いか、抗体への耐性が高い、または重症化しやすいことがわかると、VOCに指定される。

「インドSARS-CoV-2ゲノミクス・コンソーシアム(INSACOG)」はデルタプラス株をVOCではなく「注目すべき変異株(VOI)」としていると、ウイルス学者のシャヒド・ジャミール氏は述べている。INSACOGはインドの研究機関と政府機関からなる全国的なネットワークで、新型コロナウイルスの遺伝子変異を監視している。ジャミール氏は最近までINSACOGの科学顧問グループを率いていた。

 ただし、この新たな変異によって、デルタ株に比べて感染力や免疫反応に対する耐性が低下したわけではないため、「デルタプラス株もまた、懸念される変異株(VOC)に指定されることには何の問題もありません」とジャミール氏は言う。

次ページ:ワクチンは有効なのか

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

2021年2月号

ウイルスの世界/新天地を目指す女性たち/コスタリカ 野生の楽園/モニュメントは何のため?

2月号の特集「私たちはウイルスの世界に生きている」では、時には人々の生命を奪うウイルスが、生物の進化で果たしてきた役割について取り上げます。「コスタリカ 野生の楽園」はコロナ禍で保護活動が危機に直面している現地の状況をレポート。このほか、「新天地を目指す女性たち」「モニュメントは何のため?」などの特集を掲載。

定価:1,210円(税込)

おすすめ関連書籍

ビジュアル パンデミック・マップ

伝染病の起源・拡大・根絶の歴史

ささいなきっかけで、ある日、爆発的に広がる。伝染病はどのように世界に広がり、いかに人類を蹂躙したのか。地図と図版とともにやさしく解き明かす。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:2,860円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加