チンパンジーが教えてくれる、健康な老後の生き方

「チンパンジーはコレステロール値が高い」はウソだった

2021.07.14
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キバレ国立公園のカニャワラ地域の野生のチンパンジーたちは、1987年から観察されていて、霊長類の行動やヒトとの関係についての知見に貢献してきた。(PHOTOGRAPH BY RONAN DONOVAN)
キバレ国立公園のカニャワラ地域の野生のチンパンジーたちは、1987年から観察されていて、霊長類の行動やヒトとの関係についての知見に貢献してきた。(PHOTOGRAPH BY RONAN DONOVAN)
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 トンプソン氏によれば、狩猟採集生活を送っている人々は、年を取るにつれのんびりする私たちに比べて、人生の最後まで活発に活動し、長く健康を維持しているとの研究結果が多く出ているという。例えば、タンザニアのハッザ族の人々は生涯にわたって採集を続けるが、年を取っても歩行速度が大きく低下することはない。(参考記事:「ハッザ族 太古の暮らしを守る」

「弱るのは、活動するからではなく、活動しなくなるからなのです」

野生と飼育下、両方のメリットを享受

 ウガンダのンガンバ島チンパンジーサンクチュアリでは、密猟者の手から保護されたチンパンジーたちが、広い熱帯林の中を自由に動き回っている。年に一度、獣医師がチンパンジーに鎮静剤を投与したうえで健康診断が行われる。これは、老化のプロセスについてのデータを収集する絶好の機会だ。

 米ミシガン大学の人類学者アレクサンドラ・ロサティ氏は、「飼育下での研究から、チンパンジーはコレステロール値が非常に高いと考えられていました」と語る。しかし、同氏らは最近の研究で、ンガンバ島のサンクチュアリのチンパンジーたちは、飼育下のチンパンジーよりもはるかにコレステロール値が低いことを発見した。

 同様に、体重など、心血管疾患のリスクを示す他の指標も、ンガンバ島のチンパンジーの方が低かったとロサティ氏は言う。その理由は、実験用だったチンパンジーたちよりも動き回っているからではないかとのこと。また、実験施設で主食とされていたような栄養価の高いチンパンジー用の食物よりも、野菜や果物(一部は自生しているもの)を多く食べている。

 チンパンジーに老化の兆候が見られないわけではないと、ンガンバ島チンパンジーサンクチュアリでかつて獣医長を務め、現在はその責任者であるジョシュア・ルクンド氏は話す。高齢のチンパンジーには関節の炎症がよく見られるという。「また、チンパンジーは歯に問題を抱えることが多く、繊維質の食物を消化できなくなります。食物が不足すると、免疫力が低下し、病気にかかりやすくなります」

 しかし、これらの症状のほとんどは治療可能だという。ンガンバ島のチンパンジーは、健やかな老い方という観点から見るならば、野生と飼育下、両方のメリットを享受している。つまり、野生と同じように動き回れるスペースがありながら、食事や医療・健康管理など飼育下ならではの恩恵も受けられる。

 このことは、現在米国のサンクチュアリで飼育されている元実験用チンパンジーや、動物園で飼育されている類人猿などの様々な動物たちを、どのように世話するのがいいか考える上でのヒントになるかもしれない。

次ページ:骨や筋肉は「使うか、失うか」

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