エジプトやアステカの神々、古代インドや地中海の女神など、ヘビは人類の歴史を通じて恐れられ、あがめられ、芸術作品に描かれてきた。
これら古代の作品群に、フィンランドの水浸しの土地で出土した木彫りのヘビが加わった。
学術誌「Antiquity」に6月29日付けで発表された論文によれば、木彫りのヘビは2020年にヤルベンスオ1遺跡で出土した。フィンランド南西部にあり、泥炭と泥に覆われた遺跡だ。

木彫りのヘビはおよそ4000年前につくられたもので、長さは約53センチ。遺跡の泥炭層を45センチほど掘り進んだ地点で横向きの状態で発見された。1本の枝を丁寧に削り、その曲がり具合をヘビのように見せている。
論文の筆頭著者であるフィンランド、トゥルク大学の考古学者サトゥ・コイビスト氏はナショナル ジオグラフィックの取材に対し、この素朴な遺物を発見したとき、「私たち全員が身震いしました」と振り返っている。「衝撃的な発見でした」
研究チームによれば、この木彫りのヘビは新石器時代の北欧ではユニークだという。バルト海の東側からウラル山脈にかけて、木や骨、琥珀、粘土などでつくられたヘビが見つかることはあるが、水鳥やヘラジカといった生き物をかたどった彫刻に比べると一般的ではない。
木彫りのヘビが持つ意味は
使われた木もヘビの種類もまだ特定されていないが、研究チームはヘビの形としてはヨーロッパヤマカガシ(Natrix natrix)やヨーロッパクサリヘビ(Vipera berus)に似ていると考えている。
このヘビをつくった目的は謎に包まれている。子供のおもちゃだろうか。それとも、儀式用の置物か? 4000年を経て発見されたこの場所に誤って落としたのか。それとも、意図的に置いたのだろうか?
このヘビが発見された場所は深い緑に覆われた湿原で、横切るのはもちろん、近づくことさえ困難だっただろうとコイビスト氏は指摘する。
研究チームによれば、北欧のフィン・ウゴル系の人々や先住民サーミの文化では、ヘビは象徴的な意味を持ち、シャーマンがヘビに変身すると信じられてきた。また、この地域の岩絵にもヘビが登場し、人がヘビを持っている場面もある。
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