6月25日、米議会に「UFO報告書」が提出された。目撃者の証言を含めつつ、その内容を検証するシリーズの第3回(第1回はこちら)。
米国の兵器システム設計者と、ロシアや中国で同じ仕事をしている人たちの間では、目に見えないいたちごっこが続いている。シリア、台湾、ウクライナなどでは、通称「カラス(crows)」と呼ばれる軍事専門家たちが、電磁領域の覇権を争っている。
「時とともに、航空機やミサイルに搭載されているセンサーはどんどん高性能になっていきます」。軍需企業ノースロップ・グラマン社の陸海センサー担当副社長マイク・ミーニーはそう語る。「その反面、通常はすぐに、そうしたセンサーを騙して、実際には起こっていないことが起こっていると思わせる新しい方法がいろいろと開発されるのです」
レーダーのオペレーターが、非常に速く動く物体や姿を消す航空機の一団といった、通常ではありえないものを見つけた場合、カラスたちがまず思い浮かべるのは電子戦だ。
「もし敵機を1機目視したとき、突然ディスプレイに表示される敵機が20機になれば、それはスプーフィング(なりすまし)されているのです」とミーニー氏は言う。こうした遊園地のミラーハウスのようなトリックは、レーダーを使って目標を追跡することが多い対空兵器を回避するのに役立つ。
スプーフィングは、「ジンバル」の1件で起きたこととよく似ており、今回の報告書でもその可能性が指摘されている。「UAPは異常な飛行特性を示したとの報告がある。そうした観察結果は、センサーのエラー、スプーフィング、あるいは観察者の誤認の結果とも考えられ、さらに厳密な分析が必要となる」。しかし、スプーフィングがかかわっているとすれば、2015年の時点ではきわめて高度な技術だ。
しかも、キューバにいたロシアのスパイ船が電子戦の極秘ツールを使って情報収集活動に従事していたのだとすれば、それはクレムリンが機密システムを公にしたことを意味する。そうしたツールは、実際の戦闘時に使って相手の意表をついてこそ価値が高くなるはずだ。
「見せなければ見せないほどいい」というのが電子戦の鉄則だと、ミーニー氏は言う。「すべての陣営が、何をいつ見せるかについては極めて慎重です。わたしたちは必要になるまで見せませんし、50年間ずっとそうしてきました」
それに、たとえレーダー画面に映った奇妙なものをスプーフィングで説明できたとしても、パイロットが自身の目で見たものや、ビデオに映った物体についてはそうはいかない。
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