「何年も前から、わたしたちが信頼して国防を任せている人たちが、正体不明の飛行物体との遭遇を報告してきましたが、彼らの懸念はしばしば無視され、嘲笑されてきました」。ルビオ上院議員は先日、そう語っている。「この報告書は、そうした出来事を記録する重要な一歩ではありますが、これらの空中の脅威が国家安全保障上の重大な懸念であるかどうかを実際に確かめるうえでの第一歩に過ぎません」
今も落ち着かない思いを抱える目撃者たち
2020年、国防総省が、流出したUAP事例の情報は確かに未確認物体との遭遇だったと初めて認めたことで、これまで軽視されてきた目撃者たちに一気に注目が集まった。
「わたしや同じ艦の乗組員たちは、UFO体験者として引っ張りだこ状態になりました」とボーリス氏は言う。「米政府が『あれは未知のものであり、すべてほんとうのことだ』と言ったという、ただそれだけのことでです」
報告書のあいまいな内容は、UFO研究家や具体的な説明を求める人々を満足させるものではないだろう。「未確認空中現象(UAP)に関する質の高い報告は数が限られており、UAPの性質や意図について、しっかりとした結論を引き出すことが難しい」と報告書にはある。
しかし2004年の当時は、UFOを報告する者が着せられる汚名のせいで、海軍はより多くの答えを得る機会を逃したと、ディートリック氏は言う。「われわれは前方監視用赤外線カメラを搭載していました。さまざまな方法で妨害もできたはずです。なぜあの空域に注意を向けて利用できるものを利用し、より多くの証拠を得ようとしなかったのでしょうか」
その遭遇以降、今では国防総省における未確認飛行物体をめぐる議論は一変している。新たな手続きでは、職員は目撃事例を報告することを奨励され、軍指導者たちはそうした報告を真剣に受け止めている。
ディートリック氏はメリーランド州の海軍兵学校で6年以上にわたって倫理学を教えた後、2021年5月に少佐として海軍を退いた。退役直前、氏はUAPの目撃者として、初めて正式な記録に名前を記載した。空中で見た奇妙なものを報告するパイロットたちがもう不名誉を背負わずにすむよう、氏は願っている。そして、あのとき見たものが未だに正体不明であることに、今も落ち着かない思いを抱えている。
ディートリック氏は言う。「もしそれが存在していて、自分たちものではないことが明らかであるなら、われわれには前向きな選択肢はあまり残されていません」
ボーリス氏は自分なりの答えを求めて、カタリナ島にカメラを設置することを計画している。2004年にカタリナ島付近で遭遇したあのUAPを探すためだ。一般の人たち、政治家、カラス、軍事関係者などと同じように、空を見上げて、あそこにはいったい何が飛んでいるのだろうかと不思議に思いながら。
おわり
おすすめ関連書籍
ナショジオが挑む55の謎
雪男や吸血鬼、UFO・宇宙人からミステリーサークル、モアイ像、アトランティスなどの古代文明・遺跡まで。謎に満ちたあの現象の真相を、科学が解き明かします。
定価:1,540円(税込)