中国を500キロ北上、都会に近づいたゾウ15頭はこれからどこへ?

中国全土が注目、安住の地は見つかるか

2021.07.04
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6月13日、中国南西部玉渓市の郊外で昼寝する野生のゾウの群れ。15頭のゾウたちは、1年前に生息地の自然保護区を離れ、これまでに約500キロ移動した。(PHOTOGRAPH BYXINHUA XINHUA, REDUX)
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 中国南西部で、1年前から15頭のアジアゾウの群れが謎の移動を続けている。雲南省のシーサンパンナ・タイ族自治州の自然保護区にすんでいたゾウたちは、保護区を出て既に500キロ近く北上した。

 今や中国全土の注目を集めているゾウたちだが、そもそもなぜ移動を始めたのか、どこを目指しているのかは、誰にもわかっていない。中国で、かつてゾウがこれほどの長距離を移動したという記録はない。(参考記事:「ギャラリー:アジアゾウ 写真7点」

 現在、6頭のメス、3頭のオス、そして6頭の子どもで構成される群れは、人口800万人を超える昆明市の郊外にとどまっている。都会に近づくにつれて、人が住む地域に入って農作物を荒らしたり、通りをぶらついたり、小さな集落で食べ物を探し回るようになった。民家の台所や介護施設に迷い込んだり、発酵させた穀物を口にして酔ったゾウもいたという報道もされた。群れは常に集団で行動しているが、オスが1頭離脱し、現在、群れと25キロほど離れた場所にいるという。(参考記事:「ゾウと人の付き合い100年の変遷、写真16点」

 一連のゾウ騒動に中国国民の目は釘付けだが、専門家は今後どうやって人間との接触を減らすかで頭を悩ませている。「とにかく、人間とゾウが出合わないようにすることです」と話すのは、英ロンドン動物学会のベッキー・シュー・チェン氏だ。アジアゾウが専門のシュー・チェン氏は、現地の最前線で群れを監視するチームと緊密に連携している。(参考記事:「ゾウ300頭と暮らす伝統の村の新たな葛藤、タイ」

 雲南省では誰もこのような状況を経験したことがないため、現地チームはぶっつけ本番で対応に当たらなければならない。省当局は、ドローンを飛ばして群れを追跡し、主に餌と物理的な障壁を使ってゾウたちを南へ誘導しようとしている。

 チームの一員で、雲南大学・生態環境学院の陳明勇(チェン・ミンヨン)教授は、国営の中国中央テレビに対し、誘導作戦について次のように説明した。「まずゾウたちを誘導するルートを事前に決定し、そのルート上にトウモロコシやパイナップル、バナナなど香りの強い食べ物をばらまきます。それと同時に、町に向かう道路を封鎖し、基本的にゾウのために用意した道だけしか進めないようにします」(参考記事:「ロヒンギャ難民とゾウが衝突、死者13人に」

 5月末ごろから、撒き餌の効果が表れ始めた。4トン以上の餌を用意したチームは、ゾウたちの進路をわずかに南へ向けることに成功した。現在、ゾウの群れは昆明の南にある玉渓市を行ったり来たりしている。

危険な移動

 しかし、環境保護団体グリーンピースの中国事務所の研究者で、アジアゾウの保護に関して豊富な経験を持つ潘文婧(パン・ウェンジン)氏は、餌でおびき寄せるだけでは確実とは言えないと指摘する。「ゾウたちは、安全であると感じられなければ気がすみません。餌だけで移動ルートを変えさせようとしても難しいでしょう」

 北京にあるNGO「中国生物多様性保護・緑色発展基金会」の事務局長の周晋峰(ジョウ・ジンフェン)氏も、エサを撒きすぎて「人間の食べ物に依存するようになってもいけません」と警告する。

 陳氏は、電気柵を使うことも検討していると話す。

 電気柵は、人間と動物の接触を回避したり、畑へのゾウの進入を防ぐためによく使われる手だ。しかし、インド理科大学院の生態学教授で、アジアゾウの生態学と行動の著名な専門家であるラマン・スクマール氏は、今回の場合、問題がいくつもあると指摘する。(参考記事:「群衆に火をつけられ、逃げるゾウの親子」

 たとえば、ゾウが通り過ぎたらすぐに柵を撤去し、移動する先に再設置する必要があり、その手間を考えるとあまり現実的とは言えない。そもそも、なぜ群れが生息地を離れたのかがわからないのに、同じ場所に戻るまで誘導し、そこにとどまらせることができるのだろうか。「ゾウたちの予測不可能な行動を見ていると、かなり難しいと思います」

次ページ:持続可能な解決法

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