6月25日、米議会に「UFO報告書」が提出された。目撃者の証言を含めつつ、その内容を検証するシリーズの第2回(第1回はこちら)。
2004年にカリフォルニア沖で謎の物体「チクタク」を目撃したディートリック氏はその後、イラクとアフガニスタンで従軍してから、ワシントンD.C.で海軍の管理職をこなしつつ、ジョージ・ワシントン大学で2014年にMBAを取得した。
しかし、目撃事例の波紋が消え去ることはなかった。国防総省の役人たちは、ディートリック氏に対し、直接話を聞きたいという人たちに向けて説明をするよう繰り返し求めてきた。2004年以降、氏は少なくとも年に1回、通常はそれ以上の頻度で説明を依頼された。
「いいかげんうんざりしていたところに、議会からも要望が来るようになりました」とディートリック氏は言う。「『上院議員や下院議員のところにきて説明してもらえますか。マケイン氏の事務所が興味を持っています』といった具合です。ジョン・マケインの依頼をだれが断れるでしょう」。大統領が交代する時期には、国防総省の職員から新政権に対して説明するよう求められたこともあった。
目撃事例への関心は高くなったり低くなったりを繰り返していたが、2014年末から2015年初めにかけて、決定的な出来事があった。
空母ルーズベルトに配備されているスーパーホーネットが、高速で移動する未確認航空機にフロリダ沖で遭遇したのだ。あるパイロットの言葉を借りれば、それは「球体の中に立方体がある」ような形状をしていたという。
より高性能なレーダーが装備されたこれらの戦闘機は、その奇妙な物体を追跡できた。翌年の初めには、攻撃機器と連動した3台のガンカメラの映像にも飛行物体がとらえられ、それらは「ジンバル」や「ゴーファスト」という通称で呼ばれるようになった。
「どれも風に逆らって飛んでいる。風は西へ風速120ノット(秒速60メートル)」。遭遇時の記録で、あるパイロットはそう言っている。「おい、あれを見ろよ!」また別の飛行士が叫ぶ。「あれを見ろって! 回転してるぞ!」
映像を撮影した飛行士は特定されていないが、ダニー・オーコイン大尉と、ライアン・グレーブズ大尉のパイロット2人が目撃者として名乗り出ている。2014年と2015年の遭遇事例の両方において、2人はレーダー画面に奇妙な影を見つけ、戦闘機のビデオカメラで翼も尾翼もない物体を撮影した。オーコイン氏はインタビューで、物体は軍用機に反応し、その周りを回ったと述べている。
彼らも、身元が特定されていないほかのパイロットたちも、海面と同じ高さを含めて、さまざまな高度で物体を目撃しており、音速の5倍を超える極超音速まで加速する物体も追跡している。中には驚異的な航続性能をみせ、12時間も無補給で飛行を続けた例もあった。そのほか、海兵隊員によって撮影された映像では、水中に入っていったように見えるものもある。
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