米国家安全保障当局は6月25日、未確認飛行物体(いわゆるUFO)の一連の目撃事例に関する報告書を議会に提出した。これまでほとんど重要視されてこなかったこのトピックが、正式な調査対象として受け入れられたことを示す画期的な出来事だ。
国家情報長官室が作成したこの文書は、不可解な遭遇事例について新たな情報を提供している一方で、多くの重要な疑問は未解決のまま残されている。そこで、目撃者の証言を含め、いくつかの興味深い遭遇事件を詳しく紹介しつつ、これから3回に分けて報告書を検証してみたい。
海軍のパイロットをはじめとする軍人たちは、何十年も前から謎めいた飛行物体を目撃してきた。海軍のタスクフォースが調査した2004年から2021年までに起こった米政府関係者による目撃事例は144件にのぼる。しかしその正体は国防総省にもわからないという。
米情報機関では、今後はUFOという言葉は使われない。新たな名称は「未確認空中現象(Unidentified Aerial Phenomenon、UAP)だ。名称変更は、米政府がこうした謎めいた目撃事例を真剣に受け止めていることを示唆している。
議員しか閲覧できない機密事項にもふれている同報告書には、2017年に設立された国防総省のUAPタスクフォースによる調査結果が詳細に記されている。奇妙で見慣れない飛行物体の数々は、パイロットによって目撃され、レーダーや赤外線センサーによって記録されてきた。
現代航空史におけるとりわけ有名なUAP遭遇事例の数々、たとえば2004年、2014年、2015年に発生した、パイロットによる目撃情報、レーダーの追跡情報、映像にとらえられた物体などの証拠は、未解決のまま残されている。
UAPタスクフォースはこうした事例について、自然の大気現象、誤認された民間航空機、レーダーの誤作動といった一般的な解釈を検討したが、しぼむ気球が原因と特定された1件を除き、「現在のところ、われわれのデータセットには、事件を特定の説明に帰するに足る十分な情報がない」と報告書にはある。
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