イスラエルのネシェル・ラムラで出土した頭骨の一部から、バーチャル復元された頭部。彼らは比較的最近まで生きていた人類だが、「おとがい(顎先)」がないなど、非常に古い特徴も備えている。(IMAGE BY ARIEL POKHOJAEV, SACKLER FACULTY OF MEDICINE, TEL AVIV UNIVERSITY)
イスラエルのネシェル・ラムラで出土した頭骨の一部から、バーチャル復元された頭部。彼らは比較的最近まで生きていた人類だが、「おとがい(顎先)」がないなど、非常に古い特徴も備えている。(IMAGE BY ARIEL POKHOJAEV, SACKLER FACULTY OF MEDICINE, TEL AVIV UNIVERSITY)
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 イスラエルの古人類学者たちは、その頭骨化石を目にした瞬間、「私たち」の仲間ではないことに気づいた。見つかったのは、平らで高さが低い頭蓋の一部と、おとがい(顎先)のないほぼ完全な下顎骨、そして1本の歯だ。

 私たちホモ・サピエンスは、大きな脳を包む、高さがあり丸みを帯びた頭蓋をもっている。しかし、研究者たちが目にした化石骨は、ホモ・サピエンスの出現時期より数十万年も古い人類の特徴をもっていた。見つかった歯も、現地で発見されている40万年前の人類やネアンデルタール人の歯と非常によく似ていた。

 しかし驚くべきことに、古い特徴を持つこの頭骨は、たった14万〜12万年前のものにすぎないことが判明した。すでにホモ・サピエンスがいた時代だ。そのうえこの頭骨のまわりには、大きな脳をもつホモ・サピエンスかネアンデルタール人が作ったような、高度な石器が置かれていた。高度な技術を共有していることから、今回見つかった古い人類とより新しいヒト属が出会っていた可能性があると、古人類学者は考えている。(参考記事:「人類3種が数万年も共存、デニソワ人研究で判明」

 この謎の頭骨に関する二つの研究成果が、6月25日付けで学術誌「サイエンス」に発表された。

 今回の発見は、ただでさえわかりにくい中期更新世(77万年前~12万6000年前)の人類の系譜をいっそう複雑なものにしている。当時、アフリカとユーラシア大陸には、いわゆる旧人類が住んでいた。ヒト属のなかでもより初期の原始的なホモ・エレクトスと、後期の進化したネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)やホモ・サピエンスの間に位置する人類だ。

 中期更新世の旧人類化石には原始的な特徴と現代的な特徴が混在していることも多く、ハイデルベルク人(ホモ・ハイデルベルゲンシス)に分類されることが多かった。しかし一部の科学者は、なんでもかんでもホモ・ハイデルベルゲンシスに分類しすぎだと感じている。

 今回発表された2本の論文のうち1本は、この化石骨を調べることで人類の系譜のどこに当てはまるかを探り、もう1本では、一緒に出土した石器からほかの集団とのかかわりについて掘り下げている。

「ホモ・サピエンスがこの時代にこの地域に住んでいたことはわかっていましたが、同じ時代にほかのヒト属が生息していた証拠が得られたのは初めてです」と、化石骨に関する論文の著者の一人であるイスラエル、テルアビブ大学の古人類学者ハイラ・メイ氏は語る。

 同論文の筆頭著者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるテルアビブ大学の人類学者イスラエル・ハーシュコビッツ氏は、「驚くべき発見です」と語る。「2つのヒト属集団がレバント地方で約10万年にわたって共存し、知識と遺伝子を交換していたのです」

次ページ:旧人類が高度な「ルヴァロワ技法」を使っていた

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