2021年6月17日、米マサチューセッツ州のボストンメディカルセンターで、ファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンを接種した対象者に絆創膏を貼る医療従事者。世界的な感染拡大の第1波では、同センターに患者が殺到し、2020年春のピーク時には229人が病床の3分の2近くを埋めた。だが2021年6月の第4週は新型コロナ患者がゼロだった。(PHOTOGRAPH BY ADAM GLANZMAN, BLOOMBERG VIA GETTY IMAGES)
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 ある10代の少年が4月下旬、突然始まった胸の痛みを訴え、米オレゴン健康科学大学病院を訪れた。MRIで撮影したところ、心筋炎(心臓の筋肉の炎症)が見つかった。小児感染症の医師ジュディス・グスマン・コトリル氏によれば、この病院では年に数例、心筋炎になった若年者を診察することがある。

 しかし、気になるのはタイミングだった。少年は症状が出る数日前に、米ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの2回目の接種を受けていたのだ。

 その数週間後、グスマン・コトリル氏はジョージア州アトランタの医師から電話を受け、同じようにファイザー社製ワクチンの2回目の接種を受けた2日後に心筋炎を発症した患者がいることを知った。その日のうちに、コネチカット州でさらに2件、同様の事例があったというメールが届いた。

「心筋炎自体はさほど珍しくありませんので、それだけで何か新しい病気を疑うほどではありませんでした」と氏は振り返る。「ただ、健康な少年が胸の痛みを発症したという事例を、その時点で4例も聞いて、偶然にしては多すぎると思いました」

 米疾病対策センター(CDC)の予防接種に関する諮問委員会(ACIP)は、12〜29歳の心筋炎および心膜炎(心臓を包む膜の炎症)の症例が、6月11日までに323件確認されたとしている。その大半が、メッセンジャーRNA(mRNA)を使ったファイザー社製または米モデルナ社製の新型コロナワクチンを接種してから1週間以内に診断されている。この件数には、5月にファイザー社製ワクチンの接種が承認された12〜15歳の子どものデータが含まれている。

 委員会が6月23日に発表したその報告書によると、これまでのところ、ワクチン接種後の心筋炎は10代後半から20代前半に最も多い。また、2回目の接種後に発症しやすく、女性よりも男性に多い。

 CDCの新型コロナワクチンタスクフォースのメンバーであるトム・シマブクロ氏は、ワクチン接種後の心筋炎および心膜炎の発生率は、他の一般的な原因による心筋炎および心膜炎の発生率よりも高いと発表で述べた。しかし、症例は今のところまれであり、大多数の患者は治療にすぐに反応しているという。

「心筋炎が起こるのは、いまだにレアなケースです」とシマブクロ氏は述べる。「心強いことに、現在得られているデータからは、患者は症状から回復し、良好な経過をたどると言えます」

次ページ:心筋炎、心膜炎とは?

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