ペルーのアマゾン熱帯雨林でヘビを捕食する大きなシボグモの仲間。(PHOTOGRAPH BY ANTON SOROKIN / ALAMY STOCK PHOTO)
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 クモはヘビを殺して食べることができるの?

 学校での生徒の質問のように聞こえるが、これは学術誌「Journal of Arachnology」に発表された最新の論文のテーマだ。質問の答えは「イエス」。しかも、その結果は、研究を行った科学者でさえ驚くものだった。

「クモによるヘビの捕食は、(南極を除く)すべての大陸で見られることがわかりました。驚きました」と、今回の研究を率いたスイス、バーゼル大学のクモの専門家マーティン・ニフェラー氏はメールでの取材に回答した。

「しかも、様々な種類のクモに、ヘビを殺して食べる能力があり、実際にいろいろなヘビがクモに殺されていることがわかりました。これまで知られていなかったことです」

 ニフェラー氏は、米ジョージア大学に所属するヘビの専門家J・ウィットフィールド・ギボンズ氏とともに、科学文献はもちろん、ソーシャルメディアサイトやニュース記事、さらにはナショナル ジオグラフィックの古い号まで調べ上げ、クモがヘビを殺した事例を300件以上も掘り起こした。種の数はクモが40、ヘビが90を超えていた。

 ご想像の通り、タランチュラのような大型のクモは、爬虫類と戦う可能性が高いグループの一つだ。ただし、ヘビを食べることについて言えば、チャンピオンは大型グモではない。ヘビを最もよく捕食するのは、クロゴケグモを含むヒメグモ科のクモたちだった。しかも、興味深いことに、事例の多くは熱帯ではなく北米で報告されたものだ。(参考記事:「動物大図鑑 クロゴケグモ」

 今回の研究では、クモの捕食に関する知見も広がった。クモの捕食は、生態系のバランスを保つうえで、これまで考えられていた以上に大きな役割を果たしている可能性があると、ニフェラー氏は補足している。

「世界中のクモを合わせると、推定2500万トンの重さになると考えられています。クモは年間約4~8億トンの獲物を殺しています」とニフェラー氏は説明する。「自然のバランスを保つうえでクモが果たす役割を完全に理解するには、彼らの食性の全体像を把握することが不可欠です」

クモはどうやってヘビを食べるのか

 クモに捕食されるヘビは総じて小さく、体長は平均26センチだった。とはいえ、クモに比べれば何倍も大きく、ヘビを食べていたクモの体長は平均1.7センチしかない。

 ヒメグモ科をはじめ、ほとんどのケースでは、小さなクモたちは非常に頑丈な巣をつくり、しばしばそれを地面まで到達させ、無防備なヘビをわなにかける。クモの巣にヘビがかかったら、クモはかみ付き、毒でまひさせた後、クモの糸で包み、高所に運んで食べる。クモがかみ付くと、消化酵素の働きで、ヘビの柔らかい部分が液化する。これはハエが行っていることと同じだ。その後、クモは時間をかけてヘビの内部を食べる。食べ切るまでに数日、さらには数週間かかることもある。 (参考記事:「地球屈指の万能素材、クモの糸がすごすぎる」

参考ギャラリー:強くしなやかで美しい、クモの糸の多彩な世界 写真8点(画像クリックでギャラリーページへ)
石灰岩の洞窟の奥深くで、一面に露がついた巣で暮らすクモ(タナグモTegenaria属の一種)。クロアチア、プリトヴィツェ湖群国立公園にて、11月撮影。(PHOTOGRAPH BY ALEX HYDE, NATURE PICTURE LIBRARY)

次ページ:【動画】ヘビを仕留めるクモ

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