なんとヘビを食べるクモは世界中にいた 最新研究

南極を除く6大陸で確認、多かったのはタランチュラではなく小さなゴケグモ

2021.07.10
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【動画】ヘビを仕留めるクモ。オーストラリア(解説は英語です)

 クモ情報を発信する「Arachnofiles」の編集者を務めるクモ学者のセバスチャン・エチェベリ氏はメールでの取材に対し、「クモの糸がどれほど強いかについては、いつも話しています。そんな私でも、まだこの素晴らしい素材を過小評価していたことに気付きました」と語っている。「ヘビは岩のように硬い筋肉の持ち主です。ですから、簡単にクモの巣を突破して逃げられると思っていました」

 捕食が記録されたヘビのうち約30%は、サンゴヘビ、ブラウンスネーク、ガラガラヘビといった毒ヘビだった。しかし、毒牙を持つとはいえ、相手のクモはあまりに小さい。「ガラガラヘビが毒を使ってクモから身を守るのは簡単ではありません」と、米カリフォルニア州立工科大学爬虫類生理生態学研究所の所長で、ヘビの生態を専門とするエミリー・テイラー氏は話す。

人がヘビを助けた例も

 クモがヘビを捕食するという、自然界で発生した事例の多くが市民によって観察されているため、研究チームは別の傾向についても分析することにした。それは、人による介入だ。

 まず、全319事例中、クモは87%の確率でヘビを殺すことに成功した。1.5%はヘビが自力で脱出したが、11%は人が介入してヘビを救っていた。

 特にオーストラリアでは、ブラウンスネークとセアカゴケグモの対決が大半を占めたが(両者ともに人にとって致命的な毒を持つ)、目撃した人はヘビを逃がしただけでなく、ヘビの体からクモの巣を除去したケースまであった。(参考記事:「椎名誠の奇鬼驚嘆痛快話 第1回――毒話」

米ウエストバージニア州のニューリバーゴージ国立公園でヘビを食べるクロゴケグモ。(PHOTOGRAPH BY JULIA STATLER)
米ウエストバージニア州のニューリバーゴージ国立公園でヘビを食べるクロゴケグモ。(PHOTOGRAPH BY JULIA STATLER)
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「クモもヘビも嫌いな人が多いのに、ヘビを助けようとする人がいたのは驚きでした」とニフェラー氏は言う。ニフェラー氏自身も「重度のヘビ恐怖症」だ。 (参考記事:「ブツブツ恐怖症の原因に新説、トライポフォビア」

 クモの食性が多様なことを考えると、今回の研究はクモの毒の作用をさらに調べるきっかけになるかもしれない。

「クロゴケグモの毒が脊椎動物の神経系にどのような影響を及ぼすかはすでに解明されていますが、ほかの科のクモについては、毒の作用機序がよくわかっていません」とニフェラー氏は話す。

 テイラー氏は今回の研究について、「実に刺激的です」と感想を述べている。多くの人が恐れる2つの動物を取り上げているためだ。「ほとんどの人にとっては、ひどい悪夢です。8本脚のクモと脚のないヘビが対決するのですから。でも、私にとっては、まるでおとぎの国です」

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文=JASON BITTEL/訳=米井香織

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