スペインのバルセロナ近郊にあるごみ埋め立て地で、古生物学者たちが古代生物の化石を数多く掘り出している。そのなかには、類人猿やヒトの祖先のものも含まれている。
いてつくほど寒い夜をごみ埋め立て地で過ごそうと思う人はそういないだろう。しかし、古生物学者のジョセップ・ロブレスは人類の進化史に関する貴重な手がかりを探そうと、2019年12月にそんな場所にいた。彼は2カ月近く前から、週に数回、スペインのカタルーニャ州で最大のごみ埋め立て地、カン・マタで夜を過ごしていた。そこでは、ショベルカーが昼夜休みなく、バルセロナとその近郊から出るごみを埋めるための深い穴を掘っている。ロブレスをはじめとする8人の古生物学者たちはシフトを組んで、ショベルカーが掘り出す大量の土を注意深く見張るのだ。
日中は、不快な腐敗臭に釣られて、カモメの群れが騒がしく集まって来る。掘り出される土は軟らかくて粒子が細かいため、ロブレスが歩くたびに舞い上がった。夜になると、彼はしっかりと重ね着をして、ヘルメットにヘッドランプを装着する。お目当てのものが潜んでいそうな土の塊を見つけると、ショベルカーのオペレーターに手で合図をして掘削作業を中断させ、それをもう少し詳しく調べた。なおも有望そうなら、朝になってから回収できるように、光を反射するアルミホイルで土の塊を包んでおくのだ。
カン・マタの地下には、中新世の100万年を超す期間(約1250万年前~1120万年前)の多様な化石が眠っている。バルセロナ自治大学のカタルーニャ古生物学研究所(ICP)に所属するロブレスと同僚たちは、2002年以来、その年代の化石を7万点以上も見つけてきた。たとえば、ウマやサイ、シカ、長鼻類と呼ばれるゾウの仲間、ジャイアントパンダの初期の近縁種、世界最古のムササビなどの化石だ。ほかにも、太古の齧歯(げっし)類や鳥類、両生類、爬虫(はちゅう)類の化石が数多く出土している。
ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
定期購読者(月ぎめ/年間)のみ、ご利用いただけます。
定期購読者(月ぎめ/年間)であれば、
- 1 最新号に加えて2013年3月号以降のバックナンバーをいつでも読める
- 2ナショジオ日本版サイトの
限定記事を、すべて読める