ウガンダのムガヒンガ・ゴリラ国立公園で、タケノコを食べるシルバーバック(おとなのオス)のゴリラと子ども。(PHOTOGRAPH BY CHRIS SCHMID, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 分厚い胸板に鋭い犬歯。体重は180キロにも達する。「シルバーバック」と呼ばれる成熟したゴリラのオスは、いかにも力強い。しかし子育てのこととなると、彼らは「優男」にもなりうる。

 優しさは、ゴリラのオスがグループ内のメスからモテるために重要な要素の一つなのではないかと考えられている。「メスは、子どもに対して優しいオスや、子どもと一緒に過ごしてくれるオスを好むということだと思います」。米ミシガン大学の自然人類学者で、中央アフリカに生息するマウンテンゴリラの社会的行動を研究しているステイシー・ローゼンバウム氏はそう語る。(参考記事:「ゴリラはなぜ胸を叩くのか? その音からわかったこと」

 動物の母親の献身的な子育てはよく知られているが(4年半近く卵を見守ったタコもいる)、オスの努力はあまり気付かれないことが多い。理由の一つは、多くの人が動物界の極端な父親像しか知らないからだとローゼンバウム氏は言う。

「子育てを100%担うことで有名なタツノオトシゴの父親から、交尾をして別れるだけという哺乳類のオスまで、あらゆるパターンがあります。しかし、さまざまな種を長期間にわたって観察していくうちに、事情はとても複雑であることがわかってきました」

 ここでは、次世代を懸命に育てていてもなかなか注目されない動物の父親たちを紹介しよう。

ウシガエルの父親は土木技師

 雨期が来ると、アフリカウシガエルは地中から姿を現し、熱狂的な繁殖シーズンを迎える。オスは求愛の鳴き声で1匹または複数のメスを呼び寄せ、ライバルを追い払ったり、時には殺したりしつつ、メスが産んだ卵を受精させる。

 受精に成功したオスは、小さな水たまりに産み付けられた数千個の卵を任される。ヘビを始めとする捕食者を追い払い、子どもたちが生きていくのに必要な水を確保するなど、数週間にわたって卵、そして後にはオタマジャクシの世話をするのだ。

 炎天下で水たまりが乾き始めると、父親たちは、より深くて冷たい水のある場所までオタマジャクシを導く。それどころか、灌漑用の溝を掘り、消えかけの水たまりに水を引き込んだり、大きな池への脱出ルートを確保したりもする。

ボツワナの中央カラハリ動物保護区で求愛の声で鳴くアフリカウシガエルのオス。(PHOTOGRAPH BY CHRIS & MONIQUE FALLOWS, NATURE PICTURE LIBRARY)

 こうした24時間体制の子育ては、次世代の犠牲で成り立つ。オスのウシガエルは子どもに付きっきりとなるため、栄養補給のためにオタマジャクシを何匹か食べてしまうのだ。

次ページ:ヤマアラシ夫婦の献身的な子育て

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