COVID-19で命を落とした人々を追悼し、その生涯をたたえるイベントの期間中、米国ニューヨークのグリーンウッド墓地の正門に並べられた記念碑。(PHOTOGRAPHY BY SPENCER PLATT, GETTY IMAGES)
COVID-19で命を落とした人々を追悼し、その生涯をたたえるイベントの期間中、米国ニューヨークのグリーンウッド墓地の正門に並べられた記念碑。(PHOTOGRAPHY BY SPENCER PLATT, GETTY IMAGES)
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 米国が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新たな大台を突破した。ジョンズ・ホプキンス大学のデータによれば、16日現在、60万人を超える米国民が命を落としたことが確認された。集団予防接種キャンペーンが功を奏し、死亡率は全国的に低下しているが、新型コロナウイルスがもたらした甚大な被害を痛感させられる数字だ。

 米疾病対策センター(CDC)によると、15日までの1週間に1日平均285人が死亡している。ピークは1月13日の3579人で、285人は2020年3月後半以降最も低い数字だ。入院者数も減少している。

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 もしワクチンの接種がこのまま順調に進めば、秋には集団免疫が実現し、死亡者数は大幅に抑えられる見込みだ。集団免疫とは、ワクチン接種または自然感染によって十分な数の人が免疫を獲得し、ウイルスが容易に広がらなくなる状態のことだ。国民の65〜80%が接種を終えれば、集団免疫が実現すると専門家は予測している。16日現在、米国民の52.7%が少なくとも1度の接種を受けている。

 しかし、ワシントン・ポスト紙が14日付で掲載した記事によれば、ワクチンの接種率は全国的に均等なわけではなく、接種率が低い地域では感染者数が目立って増加し、入院率も著しく高いという。

「ワクチン接種を受けた人が増えれば増えるほど、ワクチン接種を受けていない人も守られることになります」と米ミネソタ大学感染症研究政策センターの所長であるマイケル・オスターホルム氏は話す。

数字が大きすぎると無感覚に

 心理学的には、数字がこれほど大きいと、人は容易に無感覚になる。人の脳は巨大な数字を処理するようにできていないためだ。専門家によれば、この反応は「対処機構」として進化した可能性が高い。数百万年前、初期人類は世界の遠く離れた場所で起きている災害について知るはずもなく、自分と自分のコミュニティーに集中することを身につけた。

 パンデミックの長期にわたる不確実な状況も、私たちがショックを感じる感覚を鈍らせる。人がリスクや不確実性に直面したときの意思決定について研究するエルケ・ウェバー氏は、脳のニューロン(神経細胞)は新しいことが起きると反応するが、しばらくすれば気付かなくなると説明する。また、脳は不快な思考を遮断することでストレスに対処する。

「ヒトという種は本当に適応力があります。紛争地帯に暮らす人々を考えてみればわかります。かつて衝撃を受けていたことも普通になってしまいます」。2020年9月に米国の死者数が20万人を突破したとき、ウェバー氏はナショナル ジオグラフィックの取材に対しそう述べている。

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