プラスチック対策には国際協定が必須、実現までの道のりは

「ひとつの国が単独で対処できる問題ではない」と専門家

2021.06.13
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海洋のプラスチック汚染は2040年に3倍に増加すると予測されている。世界規模の対策を早急に整備する必要性が高まっている。(PHOTOGRAPH BY HANNAH WHITAKER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 ポリ袋は今や、プラスチックごみ問題の象徴的な存在だ。

 現在、115カ国がポリ袋の禁止や規制を実施しているものの、その基準がバラバラなことが対策を困難にしている。たとえば、フランスでは厚さ50ミクロン未満のポリ袋が禁止されているのに対し、チュニジアの禁止対象は40ミクロン未満だ。

 このようなばらつきが抜け穴となって、行商や市場の屋台では違法なポリ袋が使われている。ケニアは、2017年に世界でもっとも厳格なポリ袋禁止令を施行したが、ウガンダやソマリアから持ち込まれる違法ポリ袋への対応に苦戦してきた。

 一方、187カ国で食品を販売しているネスレのような国際企業にしてみれば、基準がばらつくことによって、プラスチック包装材に関する187通りの国内規制に対応しなければならない。

 こうした例は、問題の一部に過ぎない。国による定義の違いだけでなく、ひとつの製品にプラスチック原料を混ぜる際の基準がないことも、リサイクルの障壁となっている。環境に流出するプラスチックごみの量を測定する方法についても、各国が合意した基準がないことが対策にブレーキをかける原因になっている。(参考記事:「海のプラ汚染、現状の対策でも悪化の一途、研究」

 そんな中、明るい兆しも見えつつある。プラスチックごみ問題に関する国際協定を設けようという声が高まっているのだ。すでに100を超える国々がプラスチック協定に支持を表明している。「本来、国際パートナーシップや国際的枠組みを活用できなければ、各国政府が役目を果たすことはできません。うまく機能しないのです」と、欧州委員会(EC)多国間環境協力ユニットのリーダー、ヒューゴ・マリア・スカリー氏は話す。

「プラスチックを持続的に利用可能にするため、産業界も公共政策に協力しましょう。つまり、産業界が解決策の一端を担うのです。そうしなければ、産業界は防御態勢に入ってしまい、この問題に加担することになります」

ごみの急増

 国連と193の加盟国で協定を取りまとめることに反対する意見もある。プラスチック問題は一刻の猶予も許されない状況なのに、国際的な合意を得るには10年以上もかかる恐れがあるというのだ。

 実際、年間2億7500万トンのペースで新たにプラスチックごみが生まれている。これまで、生産されたプラスチックの75%が廃棄物となり、プラスチック生産量は2050年までに3倍になると予測されている。今年になって発表された新たな研究では、海へ流れ出るプラスチックごみの堆積量も2040年までに3倍になり、平均で年間2900万トンに達すると試算されている。(参考記事:「年間のプラスチックごみ流出、2040年に倍増」

 たしかに国際協定の締結には時間がかかる。しかし、このように深刻な環境問題において、国際協定なしに大きな効果を上げられた例はない。

次ページ:この10年間で状況は大きく変化した

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