南半球で初観測のコククジラ、地球を半周超、最長移動記録か

遺伝子分析で出身海域を特定、残り約200頭の希少な群れからだった

2021.06.12
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米国アラスカ州のプリンス・ウィリアム湾を泳ぐコククジラ。この種は通常、太平洋に生息しているが、近年は大西洋でも目撃されている。(PHOTOGRAPH BY NATURE PICTURE LIBRARY, ALAMY)
米国アラスカ州のプリンス・ウィリアム湾を泳ぐコククジラ。この種は通常、太平洋に生息しているが、近年は大西洋でも目撃されている。(PHOTOGRAPH BY NATURE PICTURE LIBRARY, ALAMY)
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 コククジラが海洋脊椎動物の最長移動記録を打ち立てたかもしれない。その距離はおよそ2万7000キロとされ、地球を半周以上も泳いだことになる。

 この個体は2013年にナミビア沖で発見されたオスで、南半球で初めて記録されたコククジラだった。研究者らが数年かけて遺伝子研究を行った結果、はるばる北太平洋から来たことが明らかになり、6月9日付けで学術誌「Biology Letters」に論文が発表された。

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 知られている限り、北太平洋に生息するコククジラは2つの群れに分かれている。数が安定している東の群れと絶滅の危機にある西の群れだ。東の群れは生息数2万500頭前後だが、西の群れは野生に200頭ほどしかいないと推定されている。ここまで減った主な原因は、数十年にわたる商業捕鯨だ。(参考記事:「動物大図鑑 コククジラ」

 東の群れは米国アラスカ州やロシアの近海からメキシコ、バハカリフォルニア州沖の繁殖地を回遊する。西の群れの繁殖地についてはあまり知られていないが、ロシア東部の沖で餌を食べる姿が記録されている。

 研究に参加した南アフリカ、ステレンボッシュ大学の動物学者サイモン・エルウェン氏は2013年の目撃情報を初めて聞いたとき、「あまり真剣に受け止めていませんでした」と振り返る。「フランスのパリでホッキョクグマを見たと言っているようなものです。理論上は、到達することは可能ですが、あまり現実味がありません」

 写真を見てみると、確かに体長約12メートルのコククジラだった。栄養不良のためか、コククジラはナミビア、ウォルビスベイの沖に2カ月とどまり、エルウィン氏と同僚のテス・グリッドリー氏がDNAのサンプルを採取できた。

 これまでに確認されていた海洋脊椎動物の最長移動記録は、太平洋を横断したコククジラの約2万2500キロだった。それを上回る移動距離に、エルウィン氏らは疑問を持った。なぜこれほど遠い場所まで来たのだろう?(参考記事:「絶滅寸前のコククジラ、最長移動距離を樹立」

次ページ:外洋の長旅が難しいクジラ

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