新型コロナの起源、武漢研究所流出説について知っておきたいこと

米バイデン政権は8月26日までに調査報告を指示、その経緯と今後の展開は

2021.06.09
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 ドナルド・トランプ氏の元通商担当補佐官で対中強硬派のピーター・ナバロ氏は、2020年4月、いっさいの証拠を示さずに、新型コロナウイルスは生物兵器として作られた可能性があると主張した。

 新型コロナウイルスが生物兵器として作られたという説は「まったくあり得ない」と、米バンダービルト大学医療センターの感染症教授ウィリアム・シャフナー氏は言う。

 まず1つには、生物兵器とは敵対する集団を標的とし、自分の集団には影響を与えないものでなくてはならない。ところが新型コロナウイルスは「制御することができず」「自国の人々の間にも広がる」ため、「生物兵器としてはまるで逆効果を招く」ものだと、氏は主張する。

おそらく疑問は解明されない

 より妥当な研究所流出説として考えられるのは、武漢研究所が新型コロナウイルスを動物から分離、研究していた際、手違いで流出させてしまったというものだと、科学者たちは言う。「新型コロナウイルスの毒性や感染性の程度を知らず、防護策を講じなかったため、研究所の職員が感染した可能性があります」と言うのは、米マーシー大学の疫学者ロッシ・ハサド氏だ。そこから感染の連鎖が始まり、最終的にパンデミックにつながったというシナリオだ。

 ハサド氏はしかし、この研究所流出説は可能性としては「極めて低く」「適切な科学的調査を行ったとしても、おそらくは理論的なものにとどまるでしょう」と付け加えている。

 バイデン氏は米情報機関に対し、90日以内(8月26日)に調査結果を報告するよう命じた。

 最も受け入れられている仮説が、動物から人間に感染したというものである理由は明らかだと、米サンディエゴ州立大学の疫学者イーヤル・オレン氏は言う。「はっきりしているのは、新型コロナウイルスの遺伝子配列が、コウモリから見つかるほかのコロナウイルスと似ているということです」

 一部の科学者は、明確な結論が得られるかどうかについて今も懐疑的だ。シャフナー氏は言う。「最終的には、新型コロナウイルスの起源についての疑問は解明されないとわたしは考えています」

文=JILLIAN KRAMER/訳=北村京子

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