新型コロナの起源、WHO報告書の4つの可能性を再検証

野生動物による感染から流出説まで、米バイデン政権が詳しい調査を指示

2021.06.07
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 コウモリから人間に直接感染する可能性はある。中国南部の雲南省で、コウモリが生息する洞窟の近くに住んでいる人は、コウモリのコロナウイルスに対する抗体を持っているとの研究結果がある。しかし、ほとんどの人は、コウモリ研究者(通常は防護服を着用)でもない限り、コウモリのそばに長くいることはない。そのため、コウモリから人間に直接ウイルスが感染したのだとすれば、雲南省のコウモリの洞窟から2000キロ近く離れた武漢で最初の流行が起こるのは不思議と言える。

 さらに、報告書によると、コウモリが保有する近縁のコロナウイルスでさえ、SARS-CoV-2に進化するには数十年かかるはずだという。ミッシングリンクとなるようなウイルスが他に発見されていないため、WHOチームはこの説を「可能性がある~可能性が高い」としている。

2. 中間宿主の動物を介して人間へ

WHOの評価:「可能性が高い~非常に可能性が高い」

 コウモリが直接人間に新型コロナウイルスを感染させた決定的な証拠がないため、最初にミンクやセンザンコウなどの別の動物を介して感染したとの説がより有力だと科学者たちは考えている。人間はこれらの動物にコウモリよりずっと頻繁に接触する。農場で飼育されていたり、違法な野生動物の取引で売買されていたりする場合はなおさらだ。

 もしウイルスが他の動物に感染したのであれば、人間に害を及ぼすようになった理由も説明できるかもしれない。ただ、ロバートソン氏は、ウイルスが大きく変化する必要はなかっただろうと言う。ゲノム解析によると、新型コロナウイルスは人間だけに適応しているわけではないことが示唆されている。だから、センザンコウやミンクにも、ネコにも、同様に感染する。

 WHOの報告書は、これまでに知られているコロナウイルスが人間に感染する際の道筋が、このパターンだったと指摘している。例えば、2002年に流行したSARSウイルスは、コウモリからハクビシンを介して人間に感染したと考えられている。一方、MERS(中東呼吸器症候群)の原因となるウイルス(MERS-CoV)は、自然宿主についてまだ完全には明らかになっていないとはいえ、中東全域のヒトコブラクダから人に感染する。

 SARS-CoV-2が同じコロナウイルスの一種であるSARSやMERSのウイルスと似ているということは、初期の感染経路も似ていたのではないかと考える根拠になると、米ジョージタウン大学医療センターの感染症の非常勤教授、ダニエル・ルーシー氏は言う。

「肺炎、全身の病気、そして死をもたらすコロナウイルスが3種類あるということになります。これまでのウイルスは序章だったわけです」

 しかし、この説が成り立つとしても、中間宿主である動物が何であったかは明らかになっていない。WHOのチームは、中国全土の何千もの家畜から採取したサンプルを分析したが、そのすべてがSARS-CoV-2陰性だったという。だが、WHOのチームは中国の養殖ミンクを十分に検査していないとルーシー氏は指摘している。そして、ラスムセン氏によれば、WHOの調査は表面をなぞっただけであることを報告書も認めているという。

「調査されたのは、中国で養殖、捕獲、輸送されている動物のごく一部です」と同氏は話す。「十分なサンプリングにはほど遠いと思います」

次ページ:「研究所からの流出」説は

おすすめ関連書籍

ビジュアル パンデミック・マップ

伝染病の起源・拡大・根絶の歴史

ささいなきっかけで、ある日、爆発的に広がる。伝染病はどのように世界に広がり、いかに人類を蹂躙したのか。地図と図版とともにやさしく解き明かす。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:2,860円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加