90%のサメが消える事件が1900万年前に発生、原因不明

気候変動や他の捕食者の進化とも無関係、いったい何が起きたのか

2021.06.08
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 歯状突起の分類を終えたルービン氏とサイバート氏は、衝撃的な結果を突きつけられた。1900万年前より古いサンプルに比べて、新しいサンプルでは歯状突起の種類数が70%も減っていたのだ。つまり、太平洋の外洋に生息するサメの多くが、なんらかの理由で絶滅してしまったのである。

 この事件は、あるグループのサメに特に大きな影響を及ぼしたようだ。現代のサメでは泳ぎの遅い種に見られる形の歯状突起が1900万年前に激減しており、ほかのタイプの歯状突起はその後も存続していたのだ。(参考記事:「翼のようなひれをもつ古代サメが見つかる、9500万年前」

なおも解けない「絶滅の謎」

 今回の発見が、初期中新世と呼ばれるこの時代への新たな関心を呼び起こすのは確実だ。これまでに得られている当時の気候記録は、地球の気候が安定していたことを示唆しているが、その実態はよくわかっていない。

 サイバート氏によると、初期中新世の層まで採取できているはずの深海堆積物コア683本のうち、80%以上にこの時期の堆積物がないという。その理由はまだ解明されていない。しかし、化石から得られた証拠と地球の記録を考え合わせると、今から1900万年前になんらかの短期的な気候変動が地球を襲った可能性は十分に考えられる。

 英セント・アンドリューズ大学の気候科学者であるジェームズ・ライ氏は、「古代地球の研究には歴史が浅い分野もあり、比較的最近に起こった出来事について大発見があることがあります」と言う。なお、ライ氏は今回の研究には関与していない。

 例えば1980年代には、深海堆積物の研究から、約5500万年前に海洋プランクトンが大量に絶滅したことが明らかになったが、その後の研究から、この時期に地球の二酸化炭素濃度が急激に増加し、気温が上昇して海が酸性化していたことが判明した。

 現在、地質学者たちは、人為的な気候変動に対して地球がどのように反応するかを知るために、暁新世・始新世境界温暖化極大(PETM)と呼ばれるこの時期を綿密に調査している。未来の科学者たちも、同じように中新世のサメの絶滅を研究するかもしれないが、もっと多くのデータがなければ謎は解けない。

「何かがあったはずなんです」とサイバート氏は言う。「それが何なのかは、まだわかりませんが」

参考ギャラリー:襲撃するサメ集団、産卵するハタ、驚異の光景に密着3000時間 写真7点(画像クリックでギャラリーへ)
水中写真家のロラン・バレスタ氏が、南太平洋にあるフランス領ポリネシアのファカラバ環礁で、産卵に集まってくるハタの巨大な群れと、それをねらって集団で襲撃してくるサメの驚異の光景を撮影した。(写真=Laurent Ballesta)

文=Michael Greshko/訳=三枝小夜子

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