90%のサメが消える事件が1900万年前に発生、原因不明

気候変動や他の捕食者の進化とも無関係、いったい何が起きたのか

2021.06.08
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海底堆積物からサメの歴史を探る

 サイバート氏がこの謎を解くヒントを見つけたのは、数年前のこと。彼女は当時、地球の歴史のうち過去8500万年の中で、サメをはじめとする魚類が外洋でどのように暮らしていたのか、その大まかなパターンを解明しようと取り組んでいた。

 サイバート氏は地球上で最も重要な「図書館」の1つで調査を開始した。それは、1968年から科学者たちが掘削してきた深海堆積物コアだ。海底は、地球サイズの歴史書のようなものである。堆積物のそれぞれの層に含まれる物質や化石は、地球が長い歳月の間にどのように変化し、生命がどのようにしてその変化に対応してきたかという歴史を刻んでいる。過去の地球の気候変動を知るうえでも重要な記録だ。

 サイバート氏が注目したのは、「イクチオリス(ichthyolith)」と呼ばれる比較的地味な化石だった。魚の歯やサメの歯状突起など、魚の一生の中で何度も脱落しては生え変わる小さな化石だ。サイバート氏は、コアの各層に含まれるイクチオリスの種類と量を追跡することで、海洋生態系の長期的な変化を追跡したいと考えた。(参考記事:「サメ肌を飛行機の翼に付けてみたらすごかった」

 広い範囲の変化を把握するため、サイバート氏は太平洋の亜熱帯循環のある海底で掘削された2つの堆積物コアを使用した。太平洋の亜熱帯循環は数千万年にわたって安定した状態を保っている巨大な渦状の海流で、その海底の堆積物には、数百キロから数千キロも離れた場所に生息する動物の歯状突起や歯が含まれている可能性がある。サイバート氏が注目した主なコアは、彼女が生まれる前の1983年に南太平洋で採取されたものだった。

 サイバート氏がコアに含まれるサメの歯状突起と魚の歯を数えてみると、過去8500万年の間に外洋の様子が何度も変化していることがわかった。6600万年前に恐竜が絶滅するまでの堆積物には、魚の歯1本に対してサメの歯状突起は1個の割合で含まれていた。しかし、それから200万年ほどすると、サメの歯状突起の割合は半分に減った。

 約5600万年前には、魚の歯5本に対してサメの歯状突起が1個の割合になり、その後4000万年ほどはこの割合で安定していたが、1900万年前から突然、魚の歯100本に対してサメの歯状突起が1個という割合になった。「無視できない変化です」とサイバート氏は言う。

参考ギャラリー:カスザメからトラフザメまで、私たちを魅了する世界のサメ 写真29点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:カスザメからトラフザメまで、私たちを魅了する世界のサメ 写真29点(画像クリックでギャラリーへ)
静岡県沼津の漁師が発見したラブカ。(PHOTOGRAPH BY AWASHIMA MARINE PARK, GETTY IMAGES)

衝撃的な調査結果

 サイバート氏は、これらの観察結果を2016年に学術誌『英国王立協会紀要』に発表したが、まだわからないことがたくさんあった。あらゆる種類のサメが均等に減ったのか? それともあるグループのうろこ、つまりあるグループのサメが1900万年前に絶滅してしまったのか?(参考記事:「恐竜時代のサメ、餌がいなくなり絶滅か、研究」

 サイバート氏は、現在、米シラキュース大学に所属するリア・ルービン氏と協力して調査を進めた。ルービン氏は、現代のサメ、ガンギエイ、エイの皮膚の写真約600点と1300点近い化石を調べ、堆積物中の歯状突起を形状によって分類する方法を考案した。

「微化石は小さすぎて、肉眼では細部を見ることができませんが、顕微鏡で観察すると、その豪華さと複雑さに驚かされます」とルービン氏は言う。

次ページ:なおも解けない「絶滅の謎」

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