北極圏保護区での石油開発を一時停止、米アラスカ

極北の原生自然を開発すべきか、米国で40年にわたる論争

2021.06.08
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米アラスカ州北極圏国立野生生物保護区の繁殖地から、カナダのユーコンにある越冬地へ向かう大移動を始めるカリブーたち。海岸平野と呼ばれる地域は、カリブーやホッキョクグマの重要な繁殖地だ。(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 2021年6月1日、米国のバイデン政権は、トランプ前政権が認めた北極圏国立野生生物保護区(ANWR)における石油や天然ガス開発のための土地リースを、見直すと発表した。環境問題などの専門家からは、これを前向きな一歩だと評価する声があがっている。しかし、保護区をめぐって長らく繰り広げられてきた争いの解決には、まだ時間がかかりそうだ。

 米国アラスカ州にある手つかずの自然での石油やガスの採掘を認めるべきかどうか。政治家たちはこの点をめぐり、40年以上にわたる争いを続けている。保護区のリース権の入札が実施されたのは、トランプ前政権の終盤だった。リース権はアラスカ州政府が期待していたよりも大幅に少ない額で落札され、環境保護団体は売却の差し止めを求める訴訟を起こしていた。

 デブ・ハーランド米内務長官が6月1日に出した命令により、リース権売却にかかわるすべての活動が一時的に停止される。環境への潜在的な影響について、さらに詳しい調査を行うためだ。

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 環境保護団体はこの決断に喝采を送ったが、すぐにリース権を完全に取り消すべきという声が上がった。環境問題の専門家も、ANWRのリース権を一時的に停止するという判断はなされたものの、一方で政権はANWRの西、北極海沿岸部に位置するアラスカ国家石油保留地(NPR-A)での石油やガス関連の開発を支持しているため、一貫性に欠けると指摘した。

「バイデン政権が気候危機に積極的に対処することを心底期待していますが、そのためには石油やガス関連の開発を全面的に見直す必要があります」と、非営利の環境保護団体「Alaska Wilderness League」の理事クリステン・ミラー氏は述べる。

 一方、ANWRのリース権の大半を落札したアラスカ産業開発輸出公社のアラン・ワイツナー氏は、プレスリリースで次のように延べ、この決断を非難した。「バイデン政権の取り組みに非常に失望しています。アラスカ国有地保全法のもとで合意、規定されている、合法的かつ責任ある自然資源の開発をアラスカが行うことを妨げようとしているのです」

 アラスカ州のマイク・ダンリービー知事と同州選出のリサ・マーカウスキー上院議員も、州の経済が犠牲になるとして、リース権を停止するというバイデン政権の判断に反対する声明を出した。

参考ギャラリー:極北アラスカに暮らす動物たち8選(画像クリックでギャラリーへ)
輪になって子ウシを守るジャコウウシのオス。(PHOTOGRAPH BY PETER MATHER, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

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