永久凍土の下に眠る資源
今回出された命令は、1月6日にトランプ前政権のもとで認められた11区画のリース権を停止するものだ。保護区での採掘について新たな評価を行い、トランプ前政権がリース権を認めた際に、「種の保存法」などの法的要件を満たしていたかを確認することが目的だ。それに基づき、リース権を維持するか、変更するか、完全に取り消すかを決めることになる。
環境保護団体のミラー氏は、トランプ前政権の環境評価では、気候変動への影響が考慮されておらず、先住民との調整も不十分だったと述べる。グウィッチンとイヌピアトという2つの先住民グループは、この保護区を聖なる土地と考えている。また、そこは200種を超える渡り鳥の生息地であり、カリブー(トナカイ)やホッキョクグマの重要な繁殖地でもある。
しかし、保護区の設立以降、政治的な議論が止むことがないのは、永久凍土の下に眠っている資源があるからだ。
1980年、米国議会はANWRのうち3万2000平方キロを原生地域として保護することを決め、同時に沿岸部の6000平方キロメートルを将来開発が可能な土地とした。1998年の調査によると、この沿岸部には40億から110億バレルの石油が埋蔵されているという。
2001年、ブッシュ政権が保護区での化石燃料開発を進めようとして以来、この問題は党派間で争われ続けている。2017年には採掘を推進する共和党が優勢となり、議会はANWRのリース権販売を含む減税法案を成立させた。
「北極圏の保護区を守り続けるには、2017年の法律を議会が廃止する必要があります」。生物多様性センターの弁護士であるクリステン・モンセル氏はメールにそう記している。
2021年2月には110人を超える議員が2017年の法律を修正する法案を提出したものの、勢いを欠いている。この法案が成立すれば、2017年の石油やガスの開発のためのリースは無効になり、沿岸部が保護区域となる。
「北極圏保護区を採掘すれば、気候や人権に取り返しのつかない被害が及びます。バイデン政権は、この2つの領域でリーダーシップを確立し直すことの重要性を認識しています。議会はこの仕事を終わらせなければなりません」と、非営利団体「Earthjustice」アラスカ支部のエリック・グラフェ氏はメールで述べた。
おすすめ関連書籍
豪雨、豪雪、暴風、干ばつ、極寒、稲妻など、世界各地で見られる天変地異。迫力のある写真と、それぞれの状況を伝えるわかりやすいキャプションで、読む人に畏怖の念を抱かせる1冊。
定価:2,970円(税込)