北極圏保護区での石油開発を一時停止、米アラスカ

極北の原生自然を開発すべきか、米国で40年にわたる論争

2021.06.08
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永久凍土の下に眠る資源

 今回出された命令は、1月6日にトランプ前政権のもとで認められた11区画のリース権を停止するものだ。保護区での採掘について新たな評価を行い、トランプ前政権がリース権を認めた際に、「種の保存法」などの法的要件を満たしていたかを確認することが目的だ。それに基づき、リース権を維持するか、変更するか、完全に取り消すかを決めることになる。

 環境保護団体のミラー氏は、トランプ前政権の環境評価では、気候変動への影響が考慮されておらず、先住民との調整も不十分だったと述べる。グウィッチンとイヌピアトという2つの先住民グループは、この保護区を聖なる土地と考えている。また、そこは200種を超える渡り鳥の生息地であり、カリブー(トナカイ)やホッキョクグマの重要な繁殖地でもある。

 しかし、保護区の設立以降、政治的な議論が止むことがないのは、永久凍土の下に眠っている資源があるからだ。

特集ギャラリー:極北の野生に迫る危機(2018年6月号)(画像クリックでギャラリーへ)
特集ギャラリー:極北の野生に迫る危機(2018年6月号)(画像クリックでギャラリーへ)
カリブーは春になると、北極圏国立野生生物保護区(ANWR)の沿岸部にある平原に移動し、そこで6週間過ごす。草を食べて子を産み、群がってくる蚊や先住民のハンターたちから身を守る。この一帯には原油が眠っているとみられている。(PHOTOGRAPH BY FLORIAN SCHULZ)

 1980年、米国議会はANWRのうち3万2000平方キロを原生地域として保護することを決め、同時に沿岸部の6000平方キロメートルを将来開発が可能な土地とした。1998年の調査によると、この沿岸部には40億から110億バレルの石油が埋蔵されているという。

 2001年、ブッシュ政権が保護区での化石燃料開発を進めようとして以来、この問題は党派間で争われ続けている。2017年には採掘を推進する共和党が優勢となり、議会はANWRのリース権販売を含む減税法案を成立させた。

「北極圏の保護区を守り続けるには、2017年の法律を議会が廃止する必要があります」。生物多様性センターの弁護士であるクリステン・モンセル氏はメールにそう記している。

 2021年2月には110人を超える議員が2017年の法律を修正する法案を提出したものの、勢いを欠いている。この法案が成立すれば、2017年の石油やガスの開発のためのリースは無効になり、沿岸部が保護区域となる。

「北極圏保護区を採掘すれば、気候や人権に取り返しのつかない被害が及びます。バイデン政権は、この2つの領域でリーダーシップを確立し直すことの重要性を認識しています。議会はこの仕事を終わらせなければなりません」と、非営利団体「Earthjustice」アラスカ支部のエリック・グラフェ氏はメールで述べた。

次ページ:「リース権の販売は明らかな失敗でした」

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