米国ウィスコンシン州グラフトン近郊の堰で釣りをする若者。(PHOTOGRAPH BY TODD BANNOR, ALAMY)
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 米国中西部の川では数十年来、灌漑や洪水の管理のために、コンクリートでできた高さ数メートルの堰(せき)が数多く利用されてきた。ただし、堰は一部の河川管理にかかわる人々から「溺死マシン」と呼ばれるほど危険な存在でもある。

 堰の下では、急激に水流が落ち込んだ後、数メートル下流で上昇してきた水流が再び上流側の落ち込みへ引き込まれるという循環水流が発生する。この流れにはまると、水中に押し込まれて抜け出すのが困難になり、ライフジャケットもあまり役に立たない。

 堰は上流側から見えにくく、米国では過去10年間に数百人が溺死している。米ブリガムヤング大学による2015年の研究によれば、アイオワ、ペンシルベニア、ミネソタの3州だけで全米の溺死者の実に3分の1を占める。なかでもペンシルベニア州ハリスバーグにある1つの堰では、少なくとも29人の命が奪われているという。

 そんな中、いくつかの町で、この危険な構造物を川から撤去する取り組みが進んでいる。結果、危険を排除するとともに、川をレクリエーションに活用できるようになる。

子供の溺死と堰の撤去

 ラフティングを趣味とする起業家のジョン・ロフティス氏は5年間にわたって米国西部コロラド州でホワイトウォーター(急流)を追いかけ、故郷のオハイオ州に戻ったとき、西部で体験したあのスリルを地元に再現できないかと考えた。ロフティス氏には1つの計画があった。スプリングフィールドの街を流れる全長10キロ弱の小さな川バック・クリークを改良するというものだ。

 しかし、いくつもの障害がロフティス氏の行く手をはばんだ。特に大きな障害は洪水対策として数十年前に設置された3つの堰だった。2008年、そのうち一つの堰で子供が溺死するという悲劇的な事故が発生し、地域住民は変化を求めた。ロフティス氏のチームは陸軍工兵隊の協力を得て、2009年から堰の改造と撤去を開始した。

 ロフティス氏は自ら川に入り、何カ月も膝まで水につかって作業した。掘削機で堰を改造し、いくつかを完全に撤去した後、ちょうどいい波を生み出すため、玉石とコンクリートを戦略的に配置した。「私たちは毎日水に入り、バールで岩を動かしていました」

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