アリの飼育に夢中になる人が世界で急増、科学にも貢献

「おもしろくてたまりません」と飼い主、世界的なインフルエンサーも活躍

2021.06.02
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 趣味でアリを飼っている人の大半は高校生以下の若者で、特に米国、EU、オーストラリア、中国に集中しているという。彼らが飼うアリは多様であり、ごく一般的なシワアリ(Tetramorium immigrans)もいれば、種子を集めるシュウカクアリ(Pogonomyrmex occidentalis)、さらには、大きく膨らんだ腹部に蜜を蓄えてコロニー全体の緊急用食糧庫として役立てる、いわゆる「ミツツボアリ」の仲間もいる。

今回の記事のために、ナショジオでは趣味のアリの飼い主たちから、自分のコロニーを撮影した写真を募集した。この写真では、天然チョークと粘土をベースにした塗料を塗った軽量気泡コンクリートのかたまりに、オーストラリアのオオアリが巣を作っている。左手には湿気を保つための貯水槽が、右手には大きめの部屋につながる管がある。(PHOTOGRAPH BY RILEY TAYLOR)
今回の記事のために、ナショジオでは趣味のアリの飼い主たちから、自分のコロニーを撮影した写真を募集した。この写真では、天然チョークと粘土をベースにした塗料を塗った軽量気泡コンクリートのかたまりに、オーストラリアのオオアリが巣を作っている。左手には湿気を保つための貯水槽が、右手には大きめの部屋につながる管がある。(PHOTOGRAPH BY RILEY TAYLOR)

 熱心なアリの飼い主たちとは対照的に、アリ学者たちはこれまで、コロニーを維持するのに苦労することが多かった。そうなれば当然、研究を進めるのは難しい。そこで米コーネル大学の昆虫学者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるコリー・モロー氏は解決策を思いついた。

「うまくいかずに癇癪(かんしゃく)を起こしながらなんとか研究を進めるよりも、アリの世話に詳しい専門家に作業を手伝ってもらったらどうかと考えたのです」とモロー氏は言う。「彼らから学べばいいのですから」

 アリの飼い主たちは、研究者に協力することについて、自分たちの熱意をさらに高めてくれる機会と受け止めている。アゼルバイジャンのバクーに住むチンギズ・シガエフさん(16歳)は、数年前から自宅でアリを飼育し、その種を記録し続けている。シガエフさんは最近、研究者を含む活動グループに参加し、今では生物多様性のモニタリングや研究発表を手伝っている。

「いちばんワクワクするのは、わたしの地元の昆虫相がほとんど研究されていないという事実を変える手助けができることです」とシガエフさんは言う。「この状況を変えられるなんて、ほんとうに夢のようです。それに、一日中アリを眺めているというのは、わたしがやりたい仕事そのものですから」

 アリを眺めるのが楽しく感じられるのは、彼らが社会的な生物である点が大きい。アリを観察すれば、彼らが互いにコミュニケーションをとったり、戦いで傷ついた仲間を助けたり、死者を埋葬したり、協力して構造物や農場を作ったりする様子を眺めることができる。

2年もののコロニー。気泡コンクリートから削り出した産卵部屋と、3Dプリントで作ったアイテムが詰め込まれ、苔に覆われた部屋が見える。(PHOTOGRAPH BY EDEN HERTZ)
2年もののコロニー。気泡コンクリートから削り出した産卵部屋と、3Dプリントで作ったアイテムが詰め込まれ、苔に覆われた部屋が見える。(PHOTOGRAPH BY EDEN HERTZ)

チャンネル登録者数400万のユーチューバー

 ナカムラさんがアリに夢中になったのは、フィリピン系カナダ人の歌手マイキー・ブストス氏が、YouTubeにAntsCanadaというユーザ名で投稿している動画がきっかけだった。

 ブストス氏の動画は、世界中のアリの飼い主やアリ学者から、アリ飼育の普及に貢献したと評価されている。400万を超えるチャンネル登録者を抱え、2009年以降、500本以上が投稿されているAntsCanadaの動画は、にぎやかでテンポの良い冒険物語のような作りで、人々がアリをよりよく理解し、この昆虫に夢中になれるよう工夫されている。

次ページ:アリの飼い主たちの大活躍

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