ソマリの伝統的なラクダ飼いが、気候変動で存続の危機に

近年の干ばつの増加でラクダが激減、村人たちは今後の暮らし方を変えようと考え始めた

2021.06.06
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ソマリ人は、何世代にもわたってラクダを飼い、ハイエナ、チーター、ライオンなどの捕食動物から守ってきた。ところが、干ばつが増え、降雨が不安定になり、乾燥に強いはずのラクダでさえ困難に直面している。ラクダの数が減ったため、多くのラクダ飼いは伝統的なこれまでの生活を捨てざるをえなくなった。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI)
ソマリ人は、何世代にもわたってラクダを飼い、ハイエナ、チーター、ライオンなどの捕食動物から守ってきた。ところが、干ばつが増え、降雨が不安定になり、乾燥に強いはずのラクダでさえ困難に直面している。ラクダの数が減ったため、多くのラクダ飼いは伝統的なこれまでの生活を捨てざるをえなくなった。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI)

喜びと悲しみ

 ソマリ人は、ラクダが何に喜ぶかを知っている。メガーグとクダークという木の葉を好んで食べ、ナツメヤシに似たクランという実を食べると、乳が甘くなるという。また、どんな時に悲しむかも知っている。オスは、交尾相手が見つからないと声を上げて泣き、メスは子どもを失うと泣く。どのラクダも、群れからはぐれるとパニックに陥り、喉を鳴らしながらオロオロと歩き回るのだ。

 ジャーマクさんは、自分が所有するラクダの名を全て覚えている。行儀が悪く、首に木製のベルをぶら下げたラクダ。やきもちやきで、喧嘩をしないよう足かせをはめられているオスなど。ラクダを大切にし、数を増やしたいと願うあまり、ソマリのラクダ飼いはオスとメスが交尾しそうになったら、手を添えて助けることもあるという。

ヒジーンレ村の砂浜で、母親に寄り添う子ラクダ。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI)
ヒジーンレ村の砂浜で、母親に寄り添う子ラクダ。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI)

 50歳になったとき、ジャーマクさんはラクダを牧草地へ連れていくことをやめた。ラクダを襲うハイエナと戦うには、年を取りすぎたと感じたためだ。「ラクダたちは、ハイエナを見るとおしっこするのです」。ジャーマクさんの妻アダル・マハメドさんは、笑いながら言い添えた。ハイエナからラクダを守るために、ラクダ飼いはハイエナの巣を見つけては子を殺したり、懐中電灯の光を当てて目をくらませたり、銃でハイエナを撃つこともある。

「ラクダを見れば、私たちの生活全てが見えます。ラクダたちが大丈夫なら、私たちの生活も大丈夫です」

気候変動による異常気象

 最近の干ばつが示すように、気候変動はここに暮らす人々の環境を大きく変えようとしている。土地は、以前のようにラクダや他の家畜を支えることができなくなっている。

 ヒジーンレのラクダは、こぶが小さくなり、乳が出なくなった。子ラクダはやせ細り、骨と皮ばかりになった。ハイエナが狙うヤマネコやヒヒ、ディクディクと呼ばれる小型のアンテロープも餓死しているため、お腹をすかせたハイエナは以前にもましてラクダを狙うようになっている。人道支援団体が村へやってきて食料のトウモロコシを配布すると、村人たちはそれをラクダにも分け与える。食べ物は常に不足している。食べることも飲むこともできないほど弱ったラクダは、ただ砂の上にじっと座って、息絶えるのを待つ。

 深刻な干ばつを引き起こした異常気象は、2018年にサイクロンをもたらした。ヒジーンレの人々にとっては、初めての経験だった。激しい風が吹き荒れるなか、村人は野外でひとかたまりになり、風に吹き飛ばされないよう互いに抱き合っていた。

ギャラリー:ソマリランド襲う深刻な干ばつ、ラクダへの被害で苦しむ村人たち 写真9点(画像クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:ソマリランド襲う深刻な干ばつ、ラクダへの被害で苦しむ村人たち 写真9点(画像クリックでギャラリーページへ)
生後5カ月のムダーとバルードは、群れと一緒に牧草地へ草を食べに行くには幼すぎるため、砂に枝を突き立てて作った囲いの中で一日を過ごしている。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI)

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