いよいよ電気自動車の時代、バッテリーのリサイクルが鍵に

クリーンな車への移行が、不正な採掘を増長させかねない

2021.06.11
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 アースワークスからの委託で最近出された報告書によれば、仮に使用済みのEV用バッテリーが100%回収されてリサイクルされ、金属、とりわけリチウムの回収率が100%であるとしたら、2040年までのEV産業におけるリチウム需要の25%、コバルトとニッケル需要の35%を、リサイクルによって満たせるという。

 これらの見積もりは「未来を予想しようとしたものではありません」と、オーストラリア、シドニー工科大学の研究部長で、報告書の共同著者であるニック・フローリン氏はメールに書いている。「新たな採掘の需要を補うための主要な戦略として、リサイクルがどれほど重要かを調べるために、考え得る未来の姿を示したのです」

 そのような未来の鍵を開くために必要なのは、政府が確固たる政策としてEV用バッテリーのリサイクルを支援することだと、フローリン氏らは強調する。たとえば、リサイクル時にもっと簡単に分解できるようなバッテリー設計の基準や、バッテリー回収計画、埋め立てによる処分を禁止する法律、リサイクルを目的とする有害な電池廃棄物の海外輸送をしやすくする規則の整備などが考えられるだろう。

 すでにEUは、「拡大された生産者責任」に基づくEV用バッテリーの処分に対する規制を行っており、現在は鉱物回収の規制を更新しているところだ。しかし米国では、リチウムイオン電池のメーカーに廃棄物の処理を義務付けている州はたった3つしかない。

「バッテリーを販売した会社に、その寿命が尽きた時点で回収することを義務付けるのは、非常に明確な政策です」と、アースワークスのベンジャミン・ヒッチコック・アウチエッロ氏は言う。

 EV産業が急成長段階に入れば、そのバッテリー用鉱物の需要をリサイクルで大きくまかなうことは難しいだろう。リサイクルは新たな採掘を減らすための「多くの戦略のひとつ」と、米プロビデンス・カレッジの政治学者、テア・リオフランコス氏は考える。ほかにも、鉱物使用の少ないバッテリーの開発、徒歩や自転車に向いた都市の構築といった多面的なアプローチが必要だからだ。(参考記事:「未来を探す米国横断EVの旅」

 それでも、今後数十年間に必要とされるバッテリー用鉱物の4分の1から3分の1でもリサイクルによってまかなえるなら、注目する価値は十分にあるとリオフランコス氏は言う。なぜならそれが「テクノロジーと私たちの関係を考え直す」のに役立つからだ。

「リサイクルは、生物物理学的な限界を考えるきっかけになります」とリオフランコス氏。「これらは究極的には再生不可能な資源だ。地中から取ってきておいて捨ててしまうのではなく、できる限り有効活用できるように扱おうと考えるようになるということです」

文=Madeleine Stone/訳=山内百合子

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