アラスカ湾近くの漁船と海鳥の群れ。(PHOTOGRAPH BY DAVID DOUBILET, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
アラスカ湾近くの漁船と海鳥の群れ。(PHOTOGRAPH BY DAVID DOUBILET, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 地球温暖化は、陸地の気温を上げるだけではない。海も温める。海洋熱波の頻度が高まるにつれ、互いに依存し合う生物たちの関係は壊れていく。(参考記事:「世界で大幅増、海でも熱波が生物を苦しめている」

 たとえば、サンゴは褐虫藻と呼ばれる藻類と共生しており、褐虫藻がいなくなれば、サンゴは白化したり死んだりする。複数回の熱波にさらされると、そうなることが多い。また海鳥も、エサとする魚の群れが水温の上昇にともなって移動すると、遠くまで魚を探しに行かなければならなくなる。

 長い目で見るなら、これらの問題を解決する唯一の道は、温室効果ガスの排出を劇的に減らすことだ。しかし、国際的な合意が得られ、対策が実行され、その 効果が表れるまでには時間がかかる。貴重な海鳥やサンゴを救うために、今すぐできることはないだろうか。

 5月28日付けで学術誌「Science」に掲載された2報の論文によると、その答えはイエスだ。私たちにはできることがある。

熱波の影響を受けやすいサンゴとは

 海洋熱波が発生したとき、サンゴはいつ、どこで、なぜ死ぬのか。それを突き止めるため、米アリゾナ州立大学のメアリー・ドノバン氏らは、世界223カ所のサンゴ礁のデータをまとめる作業を行った。データを集めたのは、アマチュア科学者の協力でサンゴ礁や藻場を監視している「Reef Check」という団体。彼らボランティアのおかげで、サンゴが失われやすい場所が明らかになった。

 その最大のしるしは、海藻だ。サンゴとともにたくさんの海藻が生えている場所では、海藻が少ないか全くない場所に比べて、平均で10倍ものサンゴが失われていた。

 ドノバン氏によると、海藻に含まれる化学物質の中には、直接サンゴに触れると白化を引き起こすものがある。また、海藻が放出する有機化合物が酸素の量を減らし、サンゴにとってストレスにつながることもある。つまり、海藻が多いサンゴ礁では、サンゴが熱波に耐えるのは難しくなる。

 たくさんのウニがサンゴ礁にいる場合もよくないとわかった。100平方メートルほどのサンゴ礁に12〜13匹ほどのウニがいる程度なら問題ないと、ドノバン氏は言う。ウニには海藻を食べるものが多いからだ。しかし、100平方メートル当たり最大で1000個程度のウニが確認されている場所もあり、そうした場所ではウニの多さとサンゴの喪失に関連があるらしい。

「(海藻を食べつくすと)ウニはサンゴもかじり始めます」とドノバン氏は言う。サンゴの外骨格を取り除き、褐虫藻を食べようとするからだ。今回の研究から、ウニが多いサンゴ礁は熱波に弱いことがわかった。

次ページ:熱波に弱いサンゴ礁をピンポイントで守る

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