イタリア最高のワインが産まれる フリウリの秘密

オーストリア、スロベニア、アドリア海と接するこの地方のディープな魅力に迫る

2021.06.20
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丘陵のぶどう畑に夕方の日差しが降り注ぐ。イタリア、フリウリ゠ベネチア・ジュリア州で。 (PHOTOGRAPH BY THOMAS LINKEL, REDUX)
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 私(筆者のロバート・ドレイパー氏)がはじめてイタリア、コルモンスの「エノテカ・ディ・コルモンス」というワインバーを訪れたのは、秋晴れの平日の昼頃だった。近くのワイナリーへの道順を尋ねたかったのだ。

 当時、私は小説を書くためにベネチアに滞在中だった。ベネチアの行きつけのレストランでは、フリウリ゠ベネチア・ジュリア州産のピノ・グリージョがよく出された。産地はイタリア東部でスロベニアに近い地方だと、ウェイターが教えてくれた。「ヴェニカ」という小さなワイナリーで作られているそのワインが非常においしかったので、私はそのワイナリーを訪れることにした。

 私は、ワインバーのバーテンダーにヴェニカのワインを注文したが、あっさり断られた。「ヴェニカは13キロ離れたドレーニャ村のワイナリー。この店では地元産ワインしか提供しないのです」。そうイタリア語で説明すると、彼女は、3キロほど先にある「エディ・ケベル」という小さなワイナリーのワインを、グラスに注いでくれた。

 出されたのは、フリウラーノ、マルバージア・イストリアーナ、リボッラ・ジャッラというあまり知られていない地元産の3種のぶどうで作られたワインだった。一口飲むと、驚くほど芳醇で、フルーティでありながら塩味も感じさせ、まるで「ミネラルの電流」のようにのどを通っていった。私がこれまで味わったなかで最高の白ワインだっただけでなく、もっと奥深い啓示を与えてくれたように感じた。つまり、ワインは言葉や写真にはできない方法で、その土地を表現できるということだ。

 フリウリに最初に訪れてから25年、この地区が今も不思議に思えるほど観光地化していないのには理由がある。スロベニア、オーストリアと国境に接するこの地方は、文化も名称も典型的なイタリアのものではなく、州都のトリエステがイタリア領となったのも、第二次世界大戦後のことなのだ。 (参考記事:「トリエステ 脚光を浴びる港町 」

ワイン醸造の誇り高い伝統

 フリウリには、イタリアの重要な戦争記念碑や、古代ローマのすばらしい遺跡や美しい古城がある。だが、観光バスでたくさんの見物人が押し寄せるような、世界に名の知られた美術館や斜塔はない。また、フリウリは、トスカーナ州やピエモンテ州と肩を並べるイタリアの主要なワイン生産地だが、この2つの州は、白ワインではなく赤ワインの生産が主流という単純な理由から、フリウリよりもずっと有名だ。(参考記事:「イタリア屈指の高級ワイン産地 ピエモンテ州」

次ページ:深く味わいたいフリウリの白ワイン

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