絶滅と考えられた世界最小のイノシシ、回復中

絶滅危惧種コビトイノシシを野生に戻す取り組み、インド

2021.06.03
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【動画】野生に放たれるコビトイノシシ
小ささがよくわかる映像は40秒前後から。(字幕は英語です)

 2020年、新型コロナウイルスとともに、アフリカ豚熱(ASF)ウイルスがこの地に到来した。リンキー氏によれば、コビトイノシシの飼育場に入るスタッフ、車両、機材を対象に、厳格なバイオセキュリティー対策が実施されたという。コビトイノシシを守るための保護チームによる最近の取り組みを、氏は高く評価している。

「(アフリカ豚熱)ウイルスは養豚業に重大な経済的影響をもたらしますが、コビトイノシシなどの危機に直面している野生種にとっては、絶滅への道を意味します」と、IUCNのイノシシ専門家グループ委員長のヨハンナ・ロード・マルゴノ氏は指摘する。

「現場のチームは、飼育下と野生の個体を守るために、できることをすべてしています」

再発見

 コビトイノシシが西洋の科学文献に初めて記録されたのは1847年だが、その小ささと臆病さのため、その後およそ100年にわたってほとんど見られなかった。博物学者のエドワード・プリチャード・ジーは1964年の著書「The Wild Life of India(インドの野生生物)」のなかで、「(コビトイノシシが)まだ生存するかどうかを確かめようと努力している」と述べている。

 当然、その生活や行動の詳細はよくわかっていなかった。おとなのコビトイノシシは体重7〜10キロほど。草原では、ニシキヘビやカラスなどの捕食者から身を隠すことができ、安全に餌を探したり、巣の材料を集めたりもできる。(参考記事:「【動画】謎多き巨大イノシシ、撮影に成功」

 コビトイノシシは、草を引き裂いて、ねぐらである地面のくぼみにかぶせる。家族は通常、母子合わせて3〜5匹で、成熟したオスは繁殖期の数カ月だけ一緒に行動する。

 最後に目撃されてから長い年月が経過した1971年、アッサム州のバルナディ野生生物保護区のそばで、野焼きから逃れようとするコビトイノシシの群れを茶園の労働者が捕獲した。ほどなくして、リチャード・グレーブスという茶園の管理人が、地元の市場でその労働者から12匹のコビトイノシシを購入した。

 そして、グレーブスの上司だったジョン・ヤンデルが、英自然保護団体「ダレル野生生物保護基金」へ連絡。コビトイノシシの研究を行うため、基金の科学者がアッサム州に送り込まれた。だが、野生の個体を捕まえて繁殖する「コビトイノシシ保護プログラム」が1996年に始動するまでに、さらに20年以上の歳月を要した。

 飼育下で繁殖されたコビトイノシシの子どもは、生後6カ月くらいになると、ナメリ国立公園からほど近いポタサリの屋外プレリリースセンターに移される。子どもたちはそこでさらに6カ月ほど、草原の生息地を再現した環境を探索しながら適応していく。そして、ついに野生に放たれた後も、カメラトラップ(自動撮影装置)や無線発信器のほか、現地調査によって観察される。

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