5月14日、米国コネティカット州にあるミスティック水族館に、5頭のベルーガ(シロイルカ)がやってきた。7歳から12歳までのメス4頭、オス1頭のベルーガは、カナダのオンタリオ州にあるマリンランド水族館から引き取られ、コンテナに入れられて、はるばる国境を越えて飛行機とトラックで運ばれた。
到着後、医療プールに入れられた5頭は、まもなくミスティックで以前から飼育されていた3頭と同じ水槽に移され、一般に公開されることになっている。
ミスティック水族館は10年前から、マリンランドで飼育されている約50頭のベルーガのうち何頭かを引き取れないかと相談を持ち掛けていた。ミスティックでは40年間ベルーガの研究が行われてきたが、気候変動の影響が深刻化し、アラスカ州クック湾に生息するベルーガが減少していることから、研究プログラムを拡大する必要性を感じていた。
「これまで、3頭のベルーガとともに素晴らしい研究成果を上げてきました。しかし、この重要な研究を今後も続けていくためにも、数を増やす必要がありました」と、ミスティック水族館の動物学の最高責任者アリソン・タトル氏はコメントしている。水族館の研究プロジェクトは、米海洋大気局(NOAA)海洋漁業局によるクック湾のベルーガ回復計画における優先事項を中心に行われているという。
一方、カナダのマリンランドは、動物福祉に関する懸念で、1980年代から何度も苦情や抗議を受け、調査の対象になってきた。そして今、水族館は岐路に立たされている。
2018年に創立者のジョン・ホラー氏が死去し、敷地面積約4平方キロメートルの水族館を妻のマリー氏が受け継いだ。しかし、ベルーガやシャチ、セイウチ、イルカを含む4000匹近い海洋生物を抱えて、新型コロナウイルス感染症のため2020年の大半と2021年は水族館が閉鎖され、財政が逼迫していた。
「スタッフ全員で協議した結果、ベルーガの数を減らし、他の様々なプログラムに力を注ぐため、5頭を研究のために譲渡することを決定しました」とマリー・ホラー氏とマリンランドの弁護士を務めるアンドリュー・バーンズ氏は話す。譲渡は無償だったのか、それとも有償だったのか、マリンランドもミスティックも明らかにしていないが、バーンズ氏は「一般的には、プログラムを支援するために資金面でお互い協力することになっています」とだけ述べた。