残念な点を強いて挙げると、今回の皆既月食では、太陽、地球、月が完全に一直線に並ばないことだ。つまり、月は地球の影の真ん中よりも少しずれた端を通るのだ。そのため、皆既時間はわずか十数分と短い(条件がすべて揃った月食は、100分以上にわたって皆既状態になる)。(参考記事:「10年ぶりの長時間、皆既月食(2011年6月)」)
北米では、皆既食が26日午前4時11分(PDT:夏時間の米国太平洋標準時)に始まる。月は空の低い位置にあるため、南西方向に視界を遮るものがない場所を確保しよう。オーストラリアのシドニーでは、オーストラリア東部標準時の午後7時45分に月が地球の影に入り始めるため、いわゆるマジックアワーに月食を楽しめる。皆既食が始まるのは、月が東の空の高い位置にある午後9時11分だ。
月食の日、月にいる宇宙飛行士が目にするものは?
月食中の月の色は、地球の大気の状況に大きく左右される。月はふだん、その灰色の表面で太陽光が反射することで銀色に輝くが、月食の間は、その光が地球にさえぎられる。ただし、地球の大気を通過した太陽光の一部が屈折して月に到達する。そのため月は完全に黒く見えるわけではない。
なかでも赤い光は波長が長く、大気を通過しやすいので、月食の間は赤い光が優勢となって月は赤黒く見える。これはちょうど、朝日や夕日が赤く見えるのと同じ理屈だ。もし同じ時間帯に地球で火山が噴火していたなら、大気中により多くの火山灰や塵が飛散し、食の間の月はさらに暗い赤色に見えるだろう。
なお、もし月食時に、宇宙飛行士が月面に立っているとすると、彼らは驚くべき光景を目撃することになる。わかるだろうか? 彼らが目にするのは月食ではなく月での日食だ。地球は黒い円盤となり、その周囲はオレンジか赤の細い輪に囲まれるはずだ(輪は、太陽の光を屈折させている地球の大気)。
皆既月食の間は、月だけでなく星空を観察してもいいだろう。満月の光が弱くなるので、星や星座が見えるかもしれない。特に街の明かりから離れた場所なら、食の前後で星空の違いがよくわかるはずだ。(参考記事:「月食中の月に隕石が衝突、観測はおそらく初」)
今回の月食では、月は南のさそり座の位置にある。だから、さそり座でいちばん明るく輝く橙赤色のアンタレスを探してみるといい。アンタレスは月の左側、月の見た目の大きさの約12倍ほど離れた位置にある(腕を伸ばした状態で、人差し指、中指、薬指を立てた幅くらい)。
前回の皆既月食は2019年1月21日だったが、次の月食はそれほど先ではなく、今年の秋、2021年11月19日に部分月食(日本でも観測できる)がある。しかも月の97%以上が地球の影に覆われるため、ほぼ皆既月食に近いものとなる。
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