アンジェリーナ・ジョリーに群がるハチ、写真の意図は

インタビュー「ハチの保護は環境や女性活躍とつながっている」

2021.05.25
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写真家のダン・ウィンタースは、「安全第一で撮影しました」と語る。「現場では、アンジェリーナ以外の全員が防護服を着用しました。ハチを興奮させないよう、撮影は静寂の中で行い、セットはできるだけ暗くしました。アンジェリーナはハチたちを体にとまらせたまま身動きもせずに18分間の撮影に耐え、一カ所も刺されませんでした」(DAN WINTERS, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 有名女優の体に群がる生きたハチ。その写真は、人と花粉媒介昆虫の間の微妙なバランスを物語っている。

 俳優であり、映画監督であり、人道支援活動家でもあるアンジェリーナ・ジョリー氏が、ナショナル ジオグラフィックのために印象的なポートレートの撮影に挑んだ。その目的は、5月20日の「世界ミツバチの日」を記念してハチ保護の緊急性を訴えること、ひいてはユネスコとフランスの化粧品会社ゲランによるハチ保護プログラムに人々の注目を集めることにある。

 ジョリー氏は、今回、米ロサンゼルスでナショナル ジオグラフィックのインタビューに応じた。彼女は、環境や食料安全保障、女性の活躍といった課題と、ハチとのつながりについて言及したうえで、ハチの保護は私たちの手の届くところにある課題だと語った。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、人間が消費する主要な食用作物の4分の3、そして世界の農地の3分の1以上が、ミツバチなどの花粉媒介者に部分的に依存しているという。また、米国養蜂家連盟のデータでは、ミツバチだけで米国の農作物生産に200億ドル(2兆2000億円)の貢献をしており、世界の花粉媒介者は2000億ドル(22兆円)以上の食料生産を支えているという。(参考記事:「90億人の食 希望のミツバチ」

 しかし、2006年に「蜂群崩壊症候群」という現象が確認されてからの10年間で、いくつかの国ではハチの個体数が激減している。ハチの大量死の原因としては、農薬(特にネオニコチノイド系殺虫剤)、寄生虫、在来種の生息地の縮小が指摘されている。気候変動も世界中の在来種に打撃を与えていて、米国の在来種である6種以上のハチが絶滅危惧種リストに登録されている。(参考記事:「ハチが減っている、目撃される種数が世界で25%減」

ギャラリー:ハチは大切、写真から考える 15点(写真クリックでギャラリーページへ)
働きバチの走査型電子顕微鏡写真。(PHOTOGRAPH BY DAN WINTERS)

 ジョリー氏はこのほど、ユネスコとゲランが5年間にわたって展開するプログラム「ウーマン・フォー・ビー(Women for Bees)」の“ゴッドマザー”に任命された。ゲランは、ユネスコが指定した世界25カ所の生物圏保護区での50人の女性養蜂起業家の育成・支援のために200万ドル(2億2000万円)を拠出した。

 ゲランによると、女性たちは2025年までに在来種のハチの巣を2500個作り、1億2500万匹のハチを保護することになっている。今年は、ブルガリア、カンボジア、中国、エチオピア、フランス、ロシア、ルワンダ、スロベニアの女性たちが研修を受け、2022年にはペルーやインドネシアなどからも参加する計画になっている。

 このプログラムの主な目的は、各地域の養蜂方法の多様性を強調し、異なる文化のノウハウを共有することにある。例えば、中国雲南省のシーサンパンナ生物圏保護区では、伝統的に、冬の寒さからハチを守るために、倒木で作った丸太の巣箱を牛糞でふさいでいる。カンボジアのトンレサップ生物圏保護区では、コロニーを破壊せずに蜂蜜を収穫するため、養蜂家は斜めになった枝の上に巣を作らせている。ユネスコの担当者によると、「ウーマン・フォー・ビー」プログラムでは、在来種のハチを駆逐したり、病気を蔓延させたりしないように、コロニーや女王バチを外から連れてくることはしないという。

――あなたは20年前から国連難民高等弁務官事務所の特使として、弱い立場にある人々、特に女性や子どもたちを支援してきました。あなたの中で、危機的状況にある人々とミツバチはどのように結びついているのでしょうか?

 危機的状況にある人々の多くは、気候変動や戦争などが原因で家を失っています。人々が故郷を離れて移民になったり、争ったりする原因はいろいろありますが、環境が破壊され、生活の糧を奪われることは、そうした理由の1つです。

 一方、花粉を媒介する生物たちは、食料生産や環境を維持するのに欠かせませんが、寄生虫、殺虫剤、生息地の喪失、気候変動などによって、近年、危機的状況にあります。私にとって、この2つは相互に関連した問題です。(参考記事:「マルハナバチが絶滅に向かっている、原因は高温」

次ページ:今後20年の決断や行動が、地球の未来を決める

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